(D-20)で励磁試験を実施することになっているが、このD-20がNb3Snコイルとしては最高の磁場である13.5Tを記録したとの発表が行われた。
これによると、10Tで1回目のクエンチ(常電導転移)を起こし、その後のトレイニング(Training)の結果、次第に磁場が向上し、43回目のクエンチ時に13.5Tの記録を達成している。その後、60回までテストしているが、磁場が次第に低下する傾向が見られることから、何らかの性能劣化が起きているものと思われる。
Nb3Snは化合物特有の固くて脆い性質があるため、一般にW&R法(コイルに巻いてから熱処理をする方法)がとられるため、熱処理用の炉の問題や、絶縁材、応力による性能劣化の問題、コストと製作時間、信頼性の問題など解決すべき課題が多い。
一方、Nb3Snと共に高磁場用線材として開発されているNb3Alについては、日本から数件の発表があった程度で期待外れであった。
8. 高温超電導体
ビスマス系(Bi-2223)が主流で、銀シース・テープを使った内径80mm、外径292mm、高さ200mm(ダブル・パンケーキ・コイル24個)のコイルが7Tを達成している。運転電流232A、コイル電流密度7.2×103A/cm2、コイル温度10〜15Kである。
1994年にコイル内径40mmであったものが、95年に60mm、97年に80mmと次第に大きくなっているが、更なる大型化や信頼性などの製作上の問題の外、シース(sheath)材に銀や銀合金あるいは銀と金の合金など非常に高価なものを使っており、実用化のためにはコストの安い代替方法を考える必要がある。
また、高温超電導体の応用として最も実用化に近い電流リードについては、核融合ITERに応用した場合、銅の電流リードに比べて1/10のクーリングロスになるとの報告があった。
高温超電導体とはいいながら、液体窒素の温度(77k)で使用すると性能が著しく低下するため、現状では液体ヘリウム(4.2K)に近い温度で使用せざるをえず、液体窒素で使えるような改良が待たれる。
9. 中国の超電導技術
Institute of Electrical EngineeringおよびCryogenic Laboratoryの見学を行った。短時間の見学で判断するのはいささか問題であるが、見た限りでは実験装置が活発に動いているようには見えなかった。また、4Tのダイポールマグネット(蓄積エネルギー8.7MJ)の冷却過程がオーラルセッションで発表されていることなどから考えると、理論的な面や特殊な分野を除くと、これからと思われる。
また、予想に反して、ヘリウムの価格が高いとの話があったが、これはガス田におけるヘリウムの含有率が低いためとのことである。
以上