日本財団 図書館


また、実用化の面からH2Oの影響も重要な検討課題となっている。Pt-ZSM-5[57](図 2-15)、Fe-ZSM-5[58]、In/Al2O3、Ag/Al2O3[59]等で、反応系に水蒸気が共存しても比較的高い活性が得られることが報告されている。さらにCH4による還元で、In/H-ZSM-5[60]、Co-ZSM-5[61]がやはり比較的高活性を維持し(図 2-16)、水蒸気を系から除外すると活性が元に戻ることが報告されている。

 

2.5.3 反応機構

炭化水素によるNOの還元反応に関しては種々の反応機構が提案されており[62〜69],現在活発に議論がなされている。研究者によって触媒,反応条件,あるいは還元剤の種類が異なっているが,これまでに報告されている反応機構に現れる中間体から,反応の第一段階は次の2つに大別される。

(1)炭化水素と酸素の反応による部分酸化中間体の生成

(2)NOと酸素の反応によるNO2中間体の生成

遷移金属型触媒の反応機構としては,岩本ら[64]がCu/ZSM-5上でのC2H4によるNO還元反応について検討し,C2H4酸化活性発現温度とNO還元活性発現温度が一致することから,炭化水素が酸素により活性化されて生成する部分酸化中間体がNOと反応する説を提唱した。これに対して,プロトン型ZSM-5やAl2O3等の燃焼活性の低い触媒では,固体酸性が本反応に関与しており,NOと酸素の反応により生成したNO2が炭化水素と反応することにより還元反応が進行する説[65]が提案されてた。

また,いずれの反応機構についても,上記中間体からC,N,O,(H)を含む中間体が生成し,その中間体を経て最終的に窒素分子が生成する反応経路が有力となりつつある。岩本ら[66]は部分酸化中間体とNOから生成したイソシアネート(-NCO)からN2が生成することをIR測定の結果をもとに提案している。余語ら[67]は過渡応答法の結果から,Fe-silicate上でC3H6とNOより生成した含窒素中間体の窒素原子と気相のNOxの窒素原子とから窒素分子が生成する機構を提案している。また御園生ら[68]はCe/ZSM-5上でニトロまたはニトリト化合物が吸着種として存在することをIRにより観測しており,含窒素化合物が反応中間体となりNO還元が進行することを提示している。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION