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なお,乾ら[70]とBurchら[71, 72]は以上に述べた反応機構とは全く異なり,炭化水素により還元された触媒表面上でNOが分解するという機構を提案している。

 

2.5.4 NO還元触媒の課題

 

以上に述べてきたように,炭化水素によるNOxの選択還元に活性を示す触媒系が最近数多く見いだされ,現在も活発に研究が展開されている。基礎研究の成果を実用化に向けるには,さらにいくつかの課題が解決されねばならない。たとえば,

(1)共存ガス,特にH2O,SO2による触媒活性の被毒

(2)触媒作動温度域の拡大

(3)還元剤の効率的利用(選択性の向上)

(4)耐久性(活性成分及び担体の耐熱性・耐振動性)の向上

還元剤である炭化水素に限っても以下のような問題が指摘できる。例えば未燃の炭化水素を還元剤として利用することを考慮して低級炭化水素の反応について研究されている。しかし,極めて高選択性の触媒を用いない限り,高いNOx除去率を得るには燃料の一部を排ガスに添加することも考えなければならない。あるいはメタノール等のアルコール類を燃料とは別に還元剤として添加することも検討されている。これらは燃料消費率の低下を招き実用上は好ましくない[73]。従って選択性の高い触媒の開発が実用上不可欠である。

さらに,実排ガス中には複数種の炭化水素が含有されており,特定の単一成分の炭化水素で得られる結果とは異なり,例えば微量に存在する高級炭化水素による炭素析出等も考慮しなければならない。

 

 

 

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