理想的には、産学官からの出向者ではなくプロパーの優秀な研究者を採用し、最新鋭の水槽施設を備えていることが望ましいが、施設に関しては資金的に難しい面もあるので、少なくとも既存の外部施設をかなり専属的に利用できるような形にしておく必要があろう。このようなCOEは、北欧に存在する高レベルの独立専門研究機関をイメージしているが、それらと同様に企業からの受託研究を行えるようにすれば、各企業の差別化研究開発に対応できるとともに、企業が個別に水槽施設を保有する必要がなくなり、施設の合理化が促進される。
COEでは、自身が新型船舶のコンセプト構築や概念・基本設計を行うとともに、各種の共同研究開発、あるいは商品化のコーディーネート役を果たすことが望ましい。コーディネートの対象は、船舶関係の産学官の機関・企業に留まらず、物流に関与するエンドユーザやベンチャー企業等との連携も考えられる。なお、コーディネートとマーケティングについてはコンサルティング会社との連携もしくはアウトソーシングも考えられる。
(b)新型船を含む総合物流システムの研究開発プロジェクトの推進
また、当面の具体的な研究開発テーマとしては、新型船舶を含む総合物流システムの構築があげられる。このプロジェクトの場合は、荷主を含めたニーズ側の参画者を充実させるとともに、流通、物流、港湾等、総合物流システム構築に関係する業界すべてを参画させる(ノルウェーのShort Sea Shipping プロジェクトのイメージ)ことが重要である。また、このようなプロジェクトの立ち上げや運営は、政府系のコーディネート機関(フィンランドのTEKESやノルウェーの研究審議会のイメージ)で行うことが望ましい。
(c)コンサルティング機能の充実
継続発展型研究開発と同様に、創造発展型研究開発でもコンサルティング機能は重要である。COEでの成果について、トータルエコノミーや環境負荷をすぐにシミュレーションし、エンドユーザにそのメリットを提示する役割は、商品化の促進に欠くことができないものである。基本的に、造船所や研究機関もこのような機能を個別に持つことは必要だが、独自のデータを蓄積し、独自の評価方法を持つ専門アウトソーシング機関として、コンサルティング会社を育成することも必要となろう。
また、コンサルティング会社を含め、特化した分野での設計事務所、建造エンジニアリング会社等のベンチャー企業が輩出しやすいような事業環境の整備を行うことも重要である。