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6.高度な技術の創出に対する環境整備方策

 

6-1 環境整備のあり方

 

(1)わが国の造船業における研究開発環境の位置付け

本調査研究では、以下のような調査結果をとおして、わが国の造船業における研究開発環境の位置付けが把握された。

 

?わが国の造船業の研究開発において主導的な立場にある大手造船所7社の研究費及び研究者は、平成5年度以降減少の一途をたどっており、研究者に対する負荷が増し、創造的な研究開発の遂行に少なからず影響を及ぼしていることが予想される。このような傾向の持続が懸念されるとともに、今後は、このような厳しい条件のもとで効率的かつ効果的に研究開発を進めていくことが求められている。

 

?わが国の造船・海洋開発分野における研究開発の現状を把握するため、研究開発者及び研究開発管理者を対象に実施されたアンケート調査結果によれば、技術の高度化と差別化を目指す研究開発者の意識は依然として高いものがあることが理解された。しかし、一方で人材不足や研究費不足、あるいは予算配分の仕方等に対する不満も見られ、意識と現実の間に大きな乖離が見られるということが明らかにされた。

 

?わが国の造船業と他産業のプロジェクト研究開発の比較を行ったところ、例えば、建設省のプロジェクトでは、国が巨大なユーザとなっているためにニーズに基づいたテーマ選定と成果の活用がなされている点は参考となる。また、通産省のプロジェクトでは、従来のシーズ指向からニーズ指向の研究開発へ切り換えようとする動きが見られる。航空機分野では、開発リスクの分散のためのダイナミックな連携と、機体やエンジンは標準化し、内装等で航空会社のニーズに対応するという製品コンセプトは参考になる。共通しているのは、ニーズを的確に把握し、それを踏まえた上で研究開発を行うことが重要ということである。

 

?諸外国における造船技術に関する研究開発の現状を把握するため、特に産学官あるいは国際間の共同研究開発がさかんで、ユニークな研究開発機関が存在する北欧諸国を中心に現地調査を行った。その結果、次のような特徴が把握できた。

・R&3D(Research, Development, Demonstrate, Disseminate)とも言われるように、ニーズとシーズの発掘から最後の普及に至るまで技術戦略がよくできている。船主のニーズも物流システム全体に根差した視野の広さがある。また、研究開発の成果を直接需要に結び付けるコンサルタント業が存在するほどである。

・産学官の協力体制が有機的にできており、研究開発プロジェクトの企画立案、水槽等の大型施設を利用した試験のアウトソーシング等に優れる。

・国の機関や研究所に、産業との間を取り持つコーディネータ役が必ず配置されており、国の施策の普及、及び産業からのニーズの吸い上げ等の役割を担っている。

 

 

 

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