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(2)今後の造船技術の研究開発に必要な機能

我が国における造船技術の研究開発においては、今後図6-1に示すような4つの機能を持つことが要請される。特に、他産業や北欧諸国との比較で明らかなことは、従来は研究開発機能と商品開発機能を主体とした体制で新型船舶等の開発を行ってきたが、今後はマーケティング機能やコンサルティング機能を強化し、その活用により社会システムに対して適合性が高く、ニーズに充分に根差した船舶を開発していく必要があるということである。

ただし、造船業の現状から見て、造船所が個別にすべての機能を持つことは難しく、そのような中でより機動的かつ活発に研究開発を行うためには、各機能を有する専門機関や企業を創出し、それぞれがそれぞれの役割を果たしつつ(造船所から見れば、それらに適宜アウトソーシングして)、産学官の各機関・企業やエンドユーザ等と有機的な連携を保ちながら研究開発を行っていくことが最も効率的であり、かつ高競争力の成果が期待できる。

特に、マーケティングやコンサルティング(新技術とニーズのコーディネート)を専門に行うコンサルティング機構(政府機関または企業)や、特に新型船の研究開発を中心に行う独立研究開発機関(Center of Expertise:COE)を、重要なアウトソーシング先として設立・育成していく必要がある。

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(3)造船業における技術開発のタイプと環境整備のあり方

21世紀に入っても、わが国の造船業は大型タンカー、コンテナ船、LNG船等のいわゆる既存型船舶を中心に、引き続き世界の40〜50%のシェアを保ち続けることになろう。

これらに対しては、安全、環境問題への対応等の社会的要望もあり、船舶技術の高度化は引き続き必要とされる。具体的には、後述するCISS(造船・運航技術の高度統合化)、先進安全船、アジアを目指した造船・海運ロジスティクス等が新しい形の船舶需要と考えられるが、これらは在来の造船技術の延長上にあり、既存型船舶の継続的発展に必要なものとして位置付けることができることから、これらを継続発展型技術開発と総称することとした。

一方、新型船舶等、新しいニーズに応えるものとして創造発展型技術開発があげられる。この技術開発は、21世紀に向けてわが国の造船業が生き残るために必要不可欠のものであるが、取り組みかたについては、人、モノ、金のどの面から見ても今までとは異なる全く新しい体制作りが必要である。

ここでは、継続発展型技術開発と創造発展型技術開発に分けて、それぞれの環境整備のあり方を検討する。

 

 

 

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