プログラム開始時は、地理的に離れていることが1つのネックとなっていたが、今は電子メールで容易に情報交換ができ、ネットワークも整備されてきたので、そのような問題点は解消している。
3)大学との関係
?ドクターの採用と活用
クバーナは、人材の採用と研究者の専門的レベルの維持・向上において、ドクターを重視していることが一つの特徴となっている。
まず、ドクターコースの学生に対しては、年間10〜15人に対して奨学金を与えている。このうちの約半分はクバーナに入社するが、学生時代に行っていた研究テーマを、入社後もそのまま引き継いで行うケースもある。
また、グループ内のドクター取得研究者に対して「Doctoral Program」制度があり、各研究者の要望に応じて、特に海外の大学への留学を推奨している。現在、米国のジョージア工科大学、ノルウェー科学技術大学、スコットランドのストラスクライド大学等に留学している研究者がいる。
?研究開発における大学の役割
通常の研究開発における大学の役割は、基礎的な部分でのサポートが中心である。例えば、Ship R3Dプログラムの船体形状プロジェクトに参加しているのは、ほとんどが大学の研究者であり、アドバイザー的な立場からのサポートを行っている。
大学研究者の多くは、産業との関わりを持ちたいと思っている。その第一の理由は、研究資金が直接得られるからである。国の予算は教育用が主体となっており、一般的には研究費は少ない。
クバーナでは、大学の教授を一時的にアドバイザとして雇うことがある。また、事例は少ないが、大学のサバティカル制度(5年に一度、長期的に休職することができる)を利用して、1年間在籍してもらったこともあるということである。
4)ニーズの把握方法
最近活動はあまり活発ではないが、クバーナグループにも船主があり、そこから容易にニーズは把握できる。
それとは別に、重要な船主とは造船所ごとにコンタクトを緊密に取っており、定期的にミーティングを開いている。もともと特殊船の船主は数が少ないので(例えばケミカル船は2社)それほど大変な作業ではなく、従来より関係は緊密である。
したがって、顧客ニーズから研究開発テーマが生まれた例は多々あり、アイデアは常に造船所から出てくるといっても過言ではない。
5)プロジェクトの評価方法
ゴールを明確にすることを最も重視している。例えば、前述したアルミ船プロジェクトにおける“強度の30%向上と生産プロセスでの作業時間の30〜40%削減”といったようなものである。
通常、各プロジェクトでは、毎年ゴールを決めて年末に評価し、達成可能性及び変更可能性に関するディスカッションを行う。達成が難しそうな場合は、中止というケースもある。
予算も基本的にそれに対応して毎年決めるが、複数年にまたがるプロジェクトの場合は、予算は複数年のトータルで決めるが、チェックは毎年行う。