・限定された数の研究開発プロジェクトにしか投資しない。
・2〜3の研究機関としか連携しない。そうすることにより、その研究機関はトップレベルの競合性を確立でき、かつノルウェーの海運業を真にサポートしてくれる「ノウハウプール」となる。
・研究開発と教育を結びつけるために、大学とは緊密に連携を取るべきである。
・ノルウェーの海事産業の中での緊密な協力を促進するようなプロジェクトに優先的に投資する。
ノルウェーでは、大学における海事関連の研究と教育のレベルは非常に高い。トロンハイムの海洋技術センター及びMARINTEK(後述)が、先端的な応用研究を行う研究機関と海事関連研究を行う大学の両方の役割を担っている。ノルウェー船級協会(DNV、後述)は、海事分野の最も本質的な領域における包括的な研究開発を行っている。さらに、ベルゲンの船舶研究所は先進的な市場調査センターとして知られている。NSAが主に連携しているのは、これらの機関である。
4)研究開発支援の経緯
ノルウェーにおける海事関連の研究開発は、まず第一に船主のニーズに応えるために、効率的で安全、かつ環境に優しい運航を実現することを目標として行われてきた。これは、他国のほとんどが、造船所や舶用機器メーカのニーズを優先して製品開発を行っているのとは大きく異なる点である。
各年代で優先的に行われた研究開発プロジェクトは以下のとおりである。
1970年代 ・大口径ボア・ディーゼルエンジンの運航上の問題点
・コンピュータによる自動化、調整、リモートコントロール
・燃料油処理
1980年代 ・省エネルギー
・浮体式石油生産システムと深海作業
・海事関連情報技術
・グリーンシップ(環境に優しい船舶)
1990年代 ・船舶の運航における情報技術
最後に記載されているプロジェクトは「Maritime IT Operations Program」と呼ばれ、最新の情報通信技術を使って、効率的で安全、かつ環境に優しい運航を実現するとともに、充分な利得が得られるようなシステムを開発するもので、ノルウェーの主要な船主20社をはじめ、DNVや海外の舶用機器メーカも参加しており、4年間で総額約20億円の資金が投じられている。資金の拠出先別の金額は図5-2-12に示すとおりである。
当面は、以下の3点に焦点を当てた研究開発を目標としているが、高速衛星通信システムを搭載したテストシップが Leif Hoegh 社から三井造船に発注され、1996年に完成している。
・計画的なメンテナンスシステムを含む船舶と陸上との情報交換システム
・船員の教育及び船上訓練システム
・舶用機器に関する電子書類・修理マニュアル