(1)ノルウェー船主協会(Norwegian Shipowners' Association, NSA)
1)NSAの概要
ノルウェーは商船分野で約10%のシェアを持っており、特にケミカル船(23%)、LPG船(25%)、クルーズ船(22%)で高シェアを占めている。発注先としては、総トンベースでは日本が最も多く、次いで韓国、ノルウェーの順となっている。
NSAは、このような海運国を支える船主(大手は20社)で構成されている業界団体で、以下のような活動を行っている。
表5-2-7 NSAの活動内容
・ノルウェー船向け船員の採用拡大のための若い人材に対するPR・訓練キャンペーン
・船員の労働環境の改善
・安全性や環境に関する新しいルール等の提言
・中小の船主への各種サポート
・オフショア設備、特に石油採取関連設備に関するルール作り、及び作業員のトレーニング法等に関する提言
・特に船主との関連性が高い研究開発の実施、サポート
・EU等、国際的な海運関連政策策定プログラム等への参加
・国内の船主間のネットワーク作り
・各種海運関連情報のPR、出版、あるいは展示会等の企画・運営
(出所:NSA資料よりMRI作成)
NSAは、船主や船員に関する活動だけでなく、前述したようにノルウェーで実施されている船舶関連の研究開発に深く関与している。ここでは、特に研究開発に関連する活動内容について紹介する。
2)研究開発支援の目的
NSAは、ノルウェー海運業の競合性を高め、将来の戦略的な技術リソースとなるような技術的ノウハウを得ることを目的として、20年以上にわたって研究開発に対する投資を行ってきた。
船主は、基本的に自社内で研究開発を行うには限度があり、外部の研究機関に頼らざるを得ない面があるが、産業として新製品を持続的に開発し、さらに競合性を高めていくためには、常に産業界の「ノウハウプール」となるように、研究機関のグレードアップを継続的に図ることが必要不可欠である。ただし、個々の企業が研究機関のグレードアップを図ることは難しいので、メンバー企業を代表してNSAがその役割を担っている。
ちなみに、NSAは年間予算の16%を研究開発に投じているということである。
3)研究開発ポリシー
研究開発の最終的なゴールは海運業の競合性を高めることであるが、船主の内部に研究開発による新しい知識を構築するだけでなく、海事分野の研究開発を行う研究機関における専門性のグレードアップも重要である。
NSAとしては、次の4つの戦略を持っている。