次の、船主と契約してから、造船所が決まるまでのプロセスでの役割は、しっかりとした概念設計を作成することと、造船所に対する設計コンペのサポートである。特に、コンペにおける造船所の設計の評価に重要な役割を果たしているものと考えられる。
表5-2-6は、スウェーデンの船主(Stena Rederi)がスペインの造船所(Astilleros Espanoles Puerto Real Shipyard)にRO-RO旅客フェリーを発注した際に、Deltamarin が両者からコンサルティング契約を取った時のコンサルティング項目を示したものである。基本的には、概念設計、基本設計、調達でのサポートを主たるコンサルティング項目としているが、豊富なデータに基づく正確な計算や、新しいルールへの対応等をセールスポイントにしているようである。
最後の(g)から(i)が造船所へのコンサルティング、及び詳細エンジニアリングである。詳細エンジニアリングは、最初のフィージビリティ・スタディから建造、引き渡し、及び保証期間中のサービスまでを含むものである。
なお、造船所は一般的に保守的であり、新しい考え方を取り入れるように説得するのは造船所が一番難しいということである。例えば、彼らが経済性で最も重視するのは重量であるが、パーツの数や省スペースによる利得等も考慮すべきである。特に、建造プロセスでの塗装や組立の工数削減によるコスト低減効果は非常に大きい。その辺を「トータルエコノミー」の考え方で説得していきたいとのことである。