?トライマラン
このケースのトライマランは貨物用の高速3胴船で、コンセプト的にはTSLと似ている。これは、Kvaerner Masa-Yards からの委託による研究開発であるが、共同研究開発というよりは、商品開発の下請的なもので、約2,500万円で小型模型実験を請け負った。なお、VTT-MT の水槽(ヘルシンキ工科大学と共用)は小さいので、後述するスウェーデンのSSPAでも実験を行ったということである。
このような、下請的な各種実験や測定の受託はかなり行っているようであるが、前述した各分野の専門家が、専門的な立場からのアドバイスやコンサルテーションを適宜行っていると推定される。
?ナビゲーション・ソフト
特に航路が狭く、障害物の多いヘルシンキ湾での航行をシミュレートできるナビゲーション・ソフトを共同開発した。現在は同航路をバーチャル・リアリティ化したものと組み合わされており、そのソフトは市販されてトレーニング用や教育用として利用されている。
この研究開発は「Vehicle Traffic Service」という5〜6テーマから成るEUのプロジェクトの一環として進められたもので、予算的にはEUから50%、国内(TEKES、VTT)から50%の比率で提供された。
このようなEUのプロジェクトは、通常年に2回、テーマの公開と参加の申し込みがあり、参加者が決まった段階で会議を開き、予算配分、コーディネータ、成果の使い方等が決められるとのことである。
?その他の共同研究開発
前項でも述べたように、MIFを活用した産学官共同研究は、特にフィンランドのように研究者が少ない環境では重要である。大学は基礎研究、VTTは企業サイドに立った事業化研究という役割分担で共同研究開発を実施している。
TEKESから資金を得ている共同研究開発は、たとえそれが企業からの発案で認可されたものでも、VTTが関与しなければならない。また、VTT主導で実施するような共同研究開発の場合は、複数の企業が参加し、かつ製品化の見通しの高いことが、予算獲得の条件ということである。
3)ニーズの把握のしかた
前述したように、VTT-MT の各部門には、産業とのパイプ役となるコーディネータが存在するが、これがニーズの把握に重要な役割を果たしている。コーディネータは、内外の顧客、例えば船主や造船所のキーパーソンと定期的にコンタクトをとっており、常に顧客の立場に立ってニーズを把握しようと努めている。
顧客から具体的なニーズあるいはテーマが出てきた時は、まず専門家チームのマネージャとの会合を開き、最適な人材によるプロジェクトチームを結成して研究開発を開始する。
技術的な目標達成のためにチームを作るのはたやすいが、顧客とのよい関係を保つことが非常に難しいとのことである。