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?海事関連分野の概要

顧客分野で設定されている輸送機械・運輸分野は、フィンランドの産業から見た場合、実質的には海事関連、すなわち海運・造船・オフショアが主体となる。この顧客分野と研究開発分野(海事・機械工学分野)の内容は図5-2-6のように表される。

研究開発分野では、それぞれの小分野に対応して専門家チームが形成されており、専門的なサービスを提供する。また、顧客分野では、それぞれにコーディネータが配置されており、産業と専門家チームのパイプ役を果たしている。

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2)VTT-MTにおける研究開発

ここでは、最近 VTT-MT で実施されたいくつかの研究開発事例を紹介する。これらは研究開発のタイプが異なり、それぞれが VTT-MT の典型的な研究開発事例といえる。

 

?多目的砕氷船

多目的砕氷船とは、冬は砕氷船として用い、夏は石油関連の作業船として用いる船で、船体構造に特徴がある。

この船は政府管轄であることから、コンセプトそのものは政府から出されたものであるが、まず、このコンセプトを概念設計にもっていくために、後述する Deltamarin というコンサルティング会社に概念設計を委託した。

概念設計ができた段階で、今度はそれに基づき、造船所に対して見積付きの概念設計を作らせてコンペを行った結果、このケースでは Finnyards が受注し、開発過程での各種の実験を VTT-MT と共同で実施した。

このケースで注目すべきことは、(造船所ではなく)ユーザから新しい船のコンセプトが出されて、それを具体化するプロセスでコンサルティング会社を利用し、ある程度コンセプトが具体的になった段階でコンペを実施し、造船所に移管する、という開発初期でのプロセスである。コンサルティング会社は、委託研究の中で経済性の試算も行っているはずであり、おそらくその段階で見込みなしという結論が出されれば、実際の開発までは持っていかないと考えられる。

 

 

 

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