2)VTT-MTにおける研究開発
ここでは、最近 VTT-MT で実施されたいくつかの研究開発事例を紹介する。これらは研究開発のタイプが異なり、それぞれが VTT-MT の典型的な研究開発事例といえる。
?多目的砕氷船
多目的砕氷船とは、冬は砕氷船として用い、夏は石油関連の作業船として用いる船で、船体構造に特徴がある。
この船は政府管轄であることから、コンセプトそのものは政府から出されたものであるが、まず、このコンセプトを概念設計にもっていくために、後述する Deltamarin というコンサルティング会社に概念設計を委託した。
概念設計ができた段階で、今度はそれに基づき、造船所に対して見積付きの概念設計を作らせてコンペを行った結果、このケースでは Finnyards が受注し、開発過程での各種の実験を VTT-MT と共同で実施した。
このケースで注目すべきことは、(造船所ではなく)ユーザから新しい船のコンセプトが出されて、それを具体化するプロセスでコンサルティング会社を利用し、ある程度コンセプトが具体的になった段階でコンペを実施し、造船所に移管する、という開発初期でのプロセスである。コンサルティング会社は、委託研究の中で経済性の試算も行っているはずであり、おそらくその段階で見込みなしという結論が出されれば、実際の開発までは持っていかないと考えられる。