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4-3 造船業及び他産業のプロジェクト研究開発の比較

 

本項では、造船業、及び他産業(建設、航空機、電子・機械、運輸)の代表的なプロジェクト研究開発の事例を見てきたが、今後の造船業における研究開発に対して参考となりそうな点を抽出すると以下のようになる。

 

○建設分野(建設省「総合技術開発プロジェクト」)

建設分野におけるプロジェクト研究開発の最大の特徴は、建設省が公共事業を介して巨大なエンドユーザになっているということである。したがって、各種基準を策定するという一義的な目的はあるとしても、ニーズは本省、地方建設局、及び外郭団体から直接的に把握でき、かつそれに基づいて研究開発テーマをユーザの立場から抽出・選定するので、選定されたテーマの成果はすぐに公共事業で活用される。造船業との対比で見れば、建設省は荷主と船級協会を合わせたような機関である。

参考になりうる点をまとめると以下のようになる。

 

・地方建設局や外郭団体をとおして、直接的にニーズが入ってくる。

・テーマ選定がニーズ側の視点で行われている(ただし、国のニーズと国民のニーズが必ずしも一致しないのではないかという懸念は持っている)。

・一長一短はあるが、国がプロジェクトの進捗管理を行い、また成果も行政に反映されることが多い。

・建設に関わる各種基準を策定し、それを公共事業の中で普及させることにより、平等な競争環境を作り出し、なおかつ競争力の向上も図っている。

・技術開発の成果を公共事業に採用するまでのフローがきっちりできている。この場合の成 果は、国のプロジェクトでの成果だけでなく、民間で独自に開発されたものも含まれる。

 

○航空機分野

航空機分野では、開発費用が巨大化し、企業単独での開発はリスクが大きすぎて困難になっているが、その理由はかなり異なるとしても、企業単独での開発が困難になっている点は、造船業の場合と似ている。

航空機分野での研究開発で見習うべき点は、リスクシェアリングのためにダイナミックな連携を行っているということであろう。もともと、航空機の生産体制もグローバルなものであるが、開発においても縦方向、横方向の連携はさかんである。

また、航空機の生産形態、すなわち機体やエンジンは基本的に標準化し、内装や部品・部材等で航空会社の差別化に対応しているという点も、今後標準化船等の開発を進める場合は、参考になると考えられる。

参考になりうる点をまとめると以下のようになる。

 

・グローバルな研究開発・生産体制が確立されている。

・相互補完的な関係にある企業同志の合併あるいは連携がさかんである。

・リスクシェアリングのための国際的な共同開発がさかんである。

・リスクシェアリングのためにサプライヤに研究開発費の分担を求めることがある。

・航空機メーカが少ない、あるいは連携して開発するため、世界市場の中で自然とデファクトスタンダード化がなされている。

 

 

 

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