(4)運輸分野(ITS)
ここでは、5省庁が共同で研究開発を進めている高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS)の研究開発環境、研究開発内容等について解説する。
1)ITSへの取り組み経緯
ITSとは、最先端の情報通信技術等を用いて、人と道路と車両とを一体のシステムとして構築することにより、ナビゲーションシステムの高度化、有料道路等の自動料金収受システムの確立、安全運転の支援、交通管理の最適化、道路管理の効率化等を図るものである。
また、安全、快適で効率的な移動に必要な情報を迅速、正確かつわかりやすく利用者に提供するとともに、情報、制御技術の活用による運転操作の自動化等を可能とするシステムである。
これらにより、ITSは高度な道路利用、あるいは運転や歩行等の道路利用における負荷の軽減を可能とし、道路交通の安全性、輸送効率、快適性の飛躍的向上を実現するとともに、渋滞の軽減等の交通の円滑化を通し、環境保全に大きく寄与する等、真に豊かで活力ある国民生活の実現に資することを目的としている。
日本におけるITSの取り組みの経緯は、以下のとおりである。
?第1期
日本におけるITSへの着手時期は世界的に見ても早く、1973年には通産省によりCACS(Comprehensive Automobile Traffic Control System:自動車総合管制システム)への取り組みが開始され、経路誘導システム等の開発と試験運用が行われた。
?第2期
1980年代には、建設省によるRACS(Road/Automobile Communication System:路車間情報システム)、警察庁によるAMTICS(Advanced Mobile Traffic Information and Communication Systems:新自動車交通情報システム)が手掛けられ、電波システムの開発、及び標準化を手掛けてきた郵政省とともにVICS(Vehiche Information and Communication Systems:道路交通情報通信システム)へと発展した。
また、1980年代末から1990年代にかけて、道路と車両の一体化による道路交通の高度化に関する全体概念を構築したARTS(Advanced Road Transportation Systems:次世代道路交通システム[建設省])、自動車交通システムの高知能化を目指したSSVS(Super Smart Vehicle Systems:高知能自動車交通システム[通産省])、自動車安全技術の研究開発の推進を目指したASV(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車[運輸省])、道路交通の発生にまで踏み込んだ総合交通管理を目指したUTMS(Universal Traffic Management Systems:新交通管理システム[警察庁])等のプロジェクトを進めてきた。
さらに、具体的なシステムあるいは技術開発への取り組みとして、自動車の衝突防止等に重要な役割を担う小電力ミリ波レーダ[郵政省]、有料道路等の料金所で一旦停止することなく、自動的に料金の支払いを可能とするノンストップ自動料金収受システム[郵政省、建設省]、ノンストップ自動料金収受システム等への応用が期待されるワイヤレスカードシステム[郵政省]の研究開発等を進めてきた。
一方、産学により道路・交通・車両インテリジェント化推進協議会(Vehicle, Road and Traffic Intelligence Society:VERTIS)が組織され、ITS America、ERTICO(European Road Transport Telematics Implementation Co-ordination)とともに、世界会議の事務局、