(b)水平的な統合
垂直的な分化とともに、分化したシステム・機器メーカ、部品メーカレベルでの水平的な統合も見られる。これは、たとえ分化したシステム・機器メーカ等のレベルでも、ハイコスト・ハイリスクの状況は同じで、このリスクシェアリングのために同じレベル内での共同開発体制が構築されている。
一例として、欧州で航空機用の降着装置を開発しているダウディ、リーブヘル、マグナギ、メシエといったメーカは将来の民間航空機向けの降着装置の技術開発のために技術提携を行い、かつコンソーシアムとして「ユーロギア」を結成している。同様な例はアビオニクスの分野でも見られ、垂直分化した航空機産業構造の中で、水平的な統合が進み、その頂点として新たに小さなピラミッド構造が形成されることとなった。
このような環境下で、航空機産業は従来からの2つのピラミッド構造をある程度は維持しつつも、その内部に新たに小さなピラミッド構造を多数もつマルチ・ピラミッド構造とも言うべき産業構造、技術開発体制にシフトしていくことが考えられる。この場合、重要となるのがそれぞれのシステム・機器メーカ、部品メーカが、マルチ・ピラミッド構造内の小さなピラミッドの中で、いかにイニシアティブをとるかということである。
そのためには、技術開発である程度対等のリスクシェアリングパートナーとなり、産業全体の中でイコールパートナーとして位置付けられるとともに、各社が同業他者等と比べて明らかに優位である技術力をもつことが必要となる。イコールパートナーになるための、そしてイニシアティブをとるための最大の課題は、自社でイニシアティブがとれる技術をいかに選定して絞り込むかということである。そのためには過去の技術開発の実績と、技術開発を進めていくプロジェクトの統制能力等が重要な評価基準となってくる。