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の2種の機体案を提示している。AE316/317は、胴体や主翼等を完全に新設計とするが、操縦席部と操縦装置はA320ファミリーのものを使用し、操縦資格の共通性を高めることを考えている。航続距離は、両タイプとも約3,400km程度であるが、重量増加型を開発すると約5,100kmまで延びる。

1998年初めに前開発作業に着手し、99年半ばに本格開発を開始、2003年後半に実用運航を開始するという計画スケジュールが立てられている。

 

○次期小型民間ジェット旅客機(YSX)

日本航空機開発協会が計画中の、100席級小型ジェット旅客機。巡航速度800km/h程度で、地域航空輸送の強化に使用することを目的としている。

1989年度より調査を開始し、96年度にも次世代航空機等開発調査費として通産省予算に盛り込まれたが、上述のAE31X計画や、ボーイングがこのクラスの機体に魅力を感じていないこと等により、YSXの推進はかなり厳しい状況に追い込まれている。なお、企業個別では、三菱重工業がカナダのボンバルディエ社と、100席級のジェット旅客機の開発研究を行っている。

 

○次世代大型旅客機

ボーイング747に続く、大型・長距離旅客機計画で、国際線向けで550〜650席、航続距離約1万5,000km級の能力を持つものが考えられている。

事前に、ボーイングとエアバス・インダストリー・グループ4社の計5社が共同で市場性等について調査・研究を行ったが、共同開発には至らず、現在は個別に開発を進めている。

 

?今後の航空機産業における連携の方向

航空機産業における戦略的な技術開発の連携の流れは「技術開発の垂直的な分化と水平的な統合」という形で現れると予想される。

 

(a)垂直的な分化

垂直的な分化とは、従来主要な航空機メーカ、エンジンメーカを頂点として、川下から川上まである程度統合されていた技術開発が、それぞれのレベルで独自に分化することである。

ひとつの例が、旧マクドネルダグラスが次期大型旅客機として計画していたMD-12で、システム・機器メーカや部品メーカに示したリスクシェアリングとイコールパートナーの考え方である。これまで、大型旅客機では主供給メーカの一部にリスクシェアリングを行う傾向はあった(例えば、ボーイング777では日本の主要な航空機メーカの集まりが技術開発に関しては21%のリスクシェアリングを受け持っている)。しかし、MD-12では積極的に、かつ明確に、システム・機器メーカ、部品メーカにリスクシェアリングを求めた。

MD-12のプロジェクト自体はプロジェクト全体のパートナーとなる予定であった台湾エアロスペースが同プロジェクトへの参加を取り止めたために頓挫した。しかし、システム・機器、部品メーカに対して機体メーカであるマクドネルダグラスが、イコールパートナー(あるいはこれに近い形で)としてリスクシェアリングを求めたことは、従来の航空機産業における垂直的な力関係の大きな転換点、すなわちシステム・機器メーカ、部品メーカの相対的な強さを高めることとなった。同様なことは、ボーイングやエアバスでも見られる。

 

 

 

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