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(2)航空機分野

民間航空機分野では、安全性のさらなる向上と効率化等を目的として、航空機自体に加え、航法施設や空港等、航空運航を取り巻くシステム全体のハイテク化が進められている。さらに、排ガスや騒音に代表される環境対策も重要なテーマである。

新型機計画では、これらを満たすことを目標とし、さらに市場の要求に合わせた規模の機体が各種考えられているが、シェアをより確実に確保するため、アメリカではボーイングとマクドネルダグラスの大手企業同士の合併や、世界的には国際共同開発がさかんである。

本項では、航空機産業の特徴等について述べるとともに、国際共同開発の事例を紹介する。

 

1)航空機産業の特徴

 

?航空機産業の構造

航空機産業は、航空機やエンジンといった多数のシステムや部品がかかわる複雑な製品を対象としているだけに、機体やエンジンの開発・製造メーカを中心にピラミッド構造が構築されている。

図4-2-4に民間航空機を中心とした現在の航空機産業の構造を示す。現状の航空機産業は機体を開発・製造する航空機メーカと、エンジンを開発・製造するエンジンメーカをそれぞれの頂点として2つのピラミッド構造を形成している。そして、主要航空機メーカ(ボーイング、エアバス等)と主要エンジンメーカ(プラット・アンド・ホイットニー、ジェネラル・エレクトリック、IAE等)を頂点として、その下に構造部材や主要部品・システムを製造する主供給メーカと、各種航空機用部品を開発・製造する部品供給メーカが位置している。

主要航空機メーカやエンジンメーカは、基本的に自社独自の製品を開発・製造してきた。そして、主供給メーカや部品供給メーカは複数の主要航空機メーカ、主要エンジンメーカにシステムや部品等を提供しており、結果としてかなり複雑な企業間のネットワークが構成されている。

民間航空機市場では、機体メーカ、エンジンメーカともにここ数十年、メーカの淘汰がすすみ、すでにコンベア、ロッキードといった米国の大手航空機メーカやかつての欧州の航空機メーカの多くが同分野から撤退している。その意味で、頂点にある主要航空機メーカ、主要エンジンメーカは、大型民間旅客機に関しては、それぞれ2社程度まで絞り込まれている。また、主供給メーカの中には、中型・小型の旅客機を開発・製造しているメーカや、大手軍用機メーカも含まれている。

これまで、航空機産業では頂点の主要航空機メーカやエンジンメーカが技術開発を中心的に主導してきた。そして、主供給メーカや部品供給メーカは、こうした方針に基づき個々に技術開発を行い、主要航空機メーカやエンジンメーカとの共同開発(あるいは、これらの企業から技術開発を委託される形態)を行ってきた。従って、航空機メーカやエンジンメーカからみての主供給・部品供給メーカのリスクシェアリング的な位置づけは、それほど高くなかったといえる。

 

 

 

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