?直面する課題:ハイコスト・ハイリスク化
近年の航空機産業で最も特徴的なことは、新しい航空機(従来からあるものをベースとした発展型も含め)の研究開発にかかるコストとリスクが急速に増大していることである。もちろん、この背景には市場構造の変化や技術の高度化といったこともある。図4-2-5は航空機の単価と研究開発費の関係を示したものである。
例えば、民間旅客機の場合、1950年代後半に開発されたボーイング707型機と次期旅客機と言われるVLCA(Very Large Commercial Aircraft)を比較すると、開発費は30〜50倍になっている。しかし、航空機1機の単価は3〜5倍にしかなっていないため、市場規模が拡大した分を考慮しても、新しい航空機の開発に伴うコストとリスクの増大が大きいことが分かる。
このことが同産業における、国際共同開発といった横方向でのリスクシェアリングと、部品、システムメーカにも研究開発費の分担を求める縦方向のリスクシェアリングにつながり、航空機産業の構造変化をもたらす大きな要因となっている。さらに、冷戦の集結が軍用機から民間機へという産業内部でのシフトをもたらし、このことも同産業の構造変化に重大な影響を与えている。