日本財団 図書館


2)研究開発の成果

?要素技術の研究開発

TSLの研究開発は、前述したように当初計画では5年をかけて、要素技術の研究開発と実海域模型試験を行おうというものであった。

要素技術研究開発とは、TSLという高性能の船舶を設計、建造するのに必要なあらゆる基礎研究を指し、いわゆるブレークスルー技術等もこの中に含まれる。

一方、実海域模型試験は、いわゆるラージ・スケール・モデル船を設計、建造し、これにより上記要素技術の達成度を波、風のある実際の海面で確認するとともに、新しい船型コンセプトが船として成り立つかどうかを総合的に評価することを目的としたものである。

主要な研究開発テーマは表3-1-1に示したとおりであるが、平成元年度から4年度までの4年をかけて熱心な研究開発が行われた結果、所期の目的を充分に達成することができた。

 

?模型船の建造

実海域模型船の設計、建造は、平成4年度から5年度にかけて行われ、実海域での試験そのものは平成6年春の船の完成を待って直ちに実行に移された。両船型とも建造、実験されることとなったが、6カ年計画に延びたのは研究開発が遅れたためではなく、エアークッション方式の方が、長さ70mという非常に大きな模型船となったためである。

結果的には、6年に延びたために試験期間も充分とることができ、極めて満足すべき結果を得ることができた。例えば、設計段階で予測された通りの性能が、実海面でも得られたばかりでなく、エアークッション方式の模型船「飛翔」は、54ノットの試験運転最高速力を樹立するなど、多くの新記録を樹立することができた。

以上により、TSLの設計、建造技術は平成6年度までの研究開発で基本的に確立できたといえる。しかもその手法は、大部分がコンピュータのプログラムとして整備されており、また内容的にも、バランスのよい船を設計する時に遭遇するメリット・デメリットのトレードオフの関係も、それを充分吟味できるような完成度の高いものとなっている。

 

?総合実験

要素技術研究開発と実海域模型実験により、TSLのハードとしての技術開発は終わったが、これを物流システムの中に取り入れるためには、ソフト的にも解決すべき課題が山積している。中でも早急に解決すべき課題として次の3項目を選び、プロジェクトをもう1年延長して平成7年度に総合実験を行い、それらの解決を目指すこととなった。

 

・夜間、長距離運航、当直体制等の安全運航に関連する事項

・高速一貫輸送システムの構築に関連する事項

・運航データの取得、解析等の事業運営に関連する事項

 

「飛翔」による実験航海は、平成7年7月から5カ月間にわたって行われ、北海道から九州に至るまで、また太平洋、日本海両沿岸を含め、ほぼ日本列島を一周するものであった。 総航行距離は17,000海里におよび、この間沖合いでは通常40〜50ノットの高速航行を行った。波高4mを超えるような荒天に対しても、特に問題となるような激しい動揺や速度低下も起きず、ほぼスケジュール通り航海を完遂することができた。

タグボートなしで離着岸できることをはじめ、夜間や輻輳海域でも6人程度の少人数で安全に運航できることが証明された。また、長距離航海も含めて、船橋当直体制等の検討に必要なデータをそろえることができ、安全運航に関しては、東京商船大や船研等の協力

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION