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を得ることができた。

海陸一貫輸送システムとしての貨物輸送実験では、関東-九州、関東-北海道、信越-北海道間の合計20航海で、20フィートコンテナ・延べ107個分の生鮮食料品、工業製品、各種産物等の貨物を輸送したが、荷傷み、荷崩れ等も一切なく、トラックよりはむしろ安定した輸送ができた。

 

?港での高速荷役

TSLの場合、1,000トンの貨物を積み卸しするのに許される時間は、それぞれの端末港で1時間に過ぎず、現在の荷役システムに比べて飛躍的なスピードアップを必要とする。このため、今回、水平荷役システムと垂直荷役システムという2つの高速荷役システムが開発された。

前者は、シップ・アンド・オーシャン財団が開発したもので、岸壁と船との間に移動可能な架橋を渡し、この上をロボット式の台車がコンテナ4個を同時に搭載して、甲板上へ移動し、所定の据え付け台に正確に積み付けるものである。

後者は、(社)港湾荷役機械化協会が開発したもので、クレーンは在来のものを利用するが、特殊なスプレッダを用いることにより、やはりコンテナ4個を同時に吊して甲板上の所定の位置に積み付けるものである。

これらの高効率荷役システムの実験も、総合実験を機会に全国合計7つの港で実施され、いずれも1時間以内に荷役が完了できることを実証することができた。

 

?一貫輸送及び事業運営

一貫輸送に関しては、運輸省港湾局、港湾技術研究所をはじめ、農水省食品総合研究所等、広範な分野からの協力を得ることができた。

TSLによる事業運営を行うのに必要な諸データに関しては、波浪中での船速低下も含めた運航実績、燃料消費、保守点検に関するもの等、多くの有用なデータを取得することができた。

 

TSLのプロジェクトとしては、以上のような成果が得られ、インフラや法規・基準の整備等、将来に残された問題も若干あるが、一応、一貫輸送システムとして完成した。

TSLプロジェクトは、2つの方式を同時並行的に開発したり、普及を図る上で必要な各種実験を行うために期間を延長する等、運営上興味深い方式を取り、いつでも実用化のスタート台に立てる状態にはしたが、大きな初期投資が必要となるなど、経済性の評価に対応するための課題を検討する必要があり、実際にTSLを実用化させようとする企業は今のところ現れていない。

 

 

 

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