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(2) プロジェクト効果と舶用工業へのインパクト

<プロジェクト効果>

? 高度CIMプロジェクト開発による情報共有化

・新しい共通プロダクトモデルを開発することにより、各社の設計、生産、調達などの情報交換、情報共有化(ORBの活用)の基盤が形成できる。

? 既存CAD、レガシーの活用

・共通プロダクトモデルと各社既存のCADやメインフレームとのデータ連携をORBを活用して行うことにより、既存システムに手を着けないで比較的低コストの開発が可能になる。

? 事業提携の拡大

・各社の設計、生産、調達データの共有化(このためには設計業務フロー、設計情報、資材情報、生産情報の標準化がある程度必要)が図れるため、共同建造プロジェクトの増大などが期待できる。

?各社の専門性特化、集約化の拡大

・各社が得意な船種設計や製造に特化し、複数企業が共同で建造することが容易になるため、各社の強みを生かした専業化が可能になる。

・各社が自社の強みに経営資源を集中すれば、日本造船産業全体で見ると筋肉質の体質となり、生産性の飛躍的な向上により国際競争力を獲得することが可能になる。

 

<舶用工業に与えるインパクト>

? 高度造船CIMシステムへの参画、利用

・高度CIMは、オープンなオブジェクト指向の分散処理技術を基本にしており、システムへの参入、退出が容易であると思われる。

・このため、舶用工業各社は、共通プロダクトモデルと自社CADデータの交換システムを構築すれば、高度CIMシステムを活用できる。(情報システムへのアクセスだけを考えれば)

・これにより造船業との同時並行作業が可能になり、工数削減効果が期待できる。従って、イニシャルコストを補償できる一定規模以上の事業者にとってはコスト低減が期待できる。

? 取引慣行、形態変化の醸成

・従来は機器単体の価格とともに顧客(造船業)への対応力などが評価され、比較的長期継続の取引慣行が形成されてきたが、高度CIMが情報プラットフォームとして機能する範囲が広がると、製品単体の価格ではなくCIMへの対応力(すなわち生産性の向上要因を含めたトータルなコスト評価)が取引のときに重視される可能性がある。(お互いの技術力によるドライな関係の醸成)

・造船CIMおよび自社CIM(または舶用工業CIM)との連携により、製品部品の標準化や設計・開発環境の標準化が進み、基本的には受注産業であるが筋肉質なマス・カスタマイズ(共通部品を活用した個別生産)の産業構造に変革することが可能になる。

 

 

 

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