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図表II.7.1-2は、高度情報化機能毎の検討・着手状況、実現の難易度、技術要素、技術課題、業務課題をまとめたものである。難易度は、技術、企業組織、慣習、投資の分類で、各々を相対的評価したものであり、「技術」とは純粋に技術的観点からの開発の困難さ、「企業組織」とは企業内部門間や企業間での機能分担や業務遂行の仕組み等の業務形態の変革の困難さ、「慣習」とは設計慣習、商慣習や従事者の意識等を変革する困難さ、「投資」とは情報化ツールの開発・導入・運用についての資金負担と期間損金負担の大小を意味する。

技術的な観点からは、造船・舶用工業間等でのEDI(Electoric Data Interchange:電子データ交換)については、情報交換のための技術開発の側面というより、情報表現規約、業務運用規約の確立等のEDIを活用するためのプロトコルの標準化、業務規約の整備と実用的なツールの開発等が課題である。

また、プロダクトモデル等を中核とした造船CIM関連では、分散協調環境、知的共有環境、モデル表現力の拡充、建造シミュレーション技術の開発等に加えて、業務アプリケーションの開発、実用的なツールの開発が課題である。

これら技術的な側面に加えて、造船・舶用工業において高度情報化を進めていくためには、情報化技術の普及が不可欠である。情報ネットワークにおいては、より多くの事業者が情報システムを介して情報の交換、共有等を行うことにより、効果が加速されるという特質を有する。

実用化ツールの開発と並んで、ツールの共有等により開発負担の低減、情報ネットワークの構築・運用管理体制の整備、中小舶用機器メーカーの情報化支援等の施策が必要であろう。

 

1) 組織間での情報交換の効率化に資する情報化ツールと課題

組織間での情報交換の効率化に資する情報化ツールとしては、EDI(Electoric Data Interchange:電子データ交換)があげられる。EDIは、各社におけるシステム整備の自己責任を原則として、標準インターフェースの取り決めにより複数システム間でのデータ交換コストの低減と相互運用性の向上を図るツールであり、その基盤となるシンタクス・ルール等は、我が国の標準であるCII、国際標準であるUN/EDIFACT等、既に開発済みである。

狭義のEDIは、受発注や請求・検収等の業務取引情報の交換を指すが、造船・舶用工業の取引においては、機器仕様の確認等の技術情報の交換のしめる割合が高く、業務取引情報の交換のみならず、技術情報の交換が不可欠な要素である。この意味で、EDIはEDI/TDI(Technical Data Interchage:技術データ交換)ととらえる必要があり、電子承認等のCALS関連技術等を総合化した技術開発が今後の方向である。

機器仕様情報等の交換をEDI/TDIによって行うことで取引や仕様調整の効率化が期待できるが、機器等の仕様情報の表現等のルール作り、造船所と舶用機器メーカー間での技術情報内容や情報交換のタイミングの業務モデル作成、取引・技術情報交換の運用規約作り、実用的なツール開発と検証・普及等は早急に取り組むべき課題と考えられる。

 

 

 

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