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(1) 業務革新、業態革新と情報化

造船・舶用工業の高度情報化は、それ単独では、営業力の強化と生産性の向上、就労環境及び雇用条件の一層の改善、為替変動への対応、安全・環境問題への貢献等の我が国造船・舶用工業が抱える基本的な課題に対する万能な解決策とは言えないものの、事業環境変化に対応した業務改革、業態改革を進める上で情報化技術を活用することは、基本的課題の解決に道を拓く有力な手段である。

造船・舶用工業の個々の企業のレベルで、高度情報化は、?CIMの推進、自動化設備の導入等による生産の高度化や?熟練労働者の不足を設計図・工作図等の電子蓄積等によって補完することにより、生産性の向上をもたらす手段であり、造船・舶用工業間では、?機器の取り合い等に関する仕様調整の工数削減や、?取引・技術情報交換、情報処理の効率化とスピードアップにより工期短縮を実現する手段である。

また、プロダクト情報の共有を中核とした設計・建造業務の同時並行化の推進とそのための業務プロセスモデルの確立や船内プラント等のモジュール化の推進と情報ネットワークを併用することにより、?地理的に離れた造船所間での協調設計や建造といった新たな協業の形態の実現、?舶用工業間での船内プラントのモジュール単位でのシステム受注や最適供給地・生産地でのグローバルな生産管理、補修部品のロジスティクス整備の推進等、造船関連産業全体としての生産性向上の実現に道を拓く有力な手段である。

さらに、海運、検査等を含む造船・舶用工業関連産業では、舶用機器及び艤装品の標準化等や運航者からの性能、機器・部材の故障・劣化情報等のフィードバック機構の確立、鋼船規則等を組み込んだ設計支援ツールの提供等により、?トータル・ライフサイクル・サポートによる船舶の安全性の向上や、?プロダクトの改良、顧客ニーズを先取りした船舶・舶用機器の開発等への道を拓く可能性を秘めている。

造船業及び舶用工業市場は、国際的に開かれた市場であり、その需要は海運市況に大きく左右されるものとなっている。今後とも、我が国の造船・舶用工業が魅力ある産業として発展していくためには、国際競争力の維持、強化、さらには需要変動に対応した適正な生産体制の構築、雇用の確保を含めた生産性向上、工期短縮、品質向上、技術力向上という観点から、業態の変革を含む業務の見直しが必要であり、その重要なツールとして高度情報化を捉えることが必要である。

 

 

 

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