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(1) 基盤強化の方向

図表?.6.5-1は、造船・舶用工業の基盤強化の方向と、高度情報化技術を用いてこれを実現しようとする場合に必要な情報化機能を概観したものである。

基盤強化方向の第一は、造船・舶用工業の強みや各経営資源を有効に活用し、産業全体としての経営基盤の強化を図ることである。新造船需要の変動については、2000年以降に予想される大型タンカー代替需要一巡後の需給不均衡に備える必要がある。また、今後各国の新造船供給能力の拡大等による国際競争の激化が予想されているが、そのような状況下において、損益分岐点を下げ国際競争力を維持していくためにはシェアを維持していく必要がある。そのためには、企業間業務の効率化や業務提携等も視野に入れた、業界全体の競争基盤の強化を図り、併せて個々の企業としては、その中での競争力を高める等、より需要変動に強い経営構造のあり方の模索が必要と思われる。

第二は、造船・舶用工業の最も重要な中核業務である生産基盤の強化を図ることである。コスト削減と工作精度の維持は最も重要な競争力の要因であり、また、受注から引渡しまでの期間の短縮は為替リスクを回避する観点からも重要であることから、これを可能とする一層の業務プロセスの改善が求められる。さらに、団塊世代の大量退職等による熟練労働者の不足と就労人口の減少による人材確保の困難性も見据える必要がある。このためには、短期的には技能の継承を図ると共に、中期的には生産工程をシステム化し、併せて手戻り低減のための精度予測・管理を強化する等、個人の能力に過度に依存しない生産プロセスを実現する等生産基盤の整備が必要になる。さらに舶用工業については、上記に加え顧客ニーズへの対応、品質、納期管理等わが国舶用工業の強みを維持しつつ、機器の標準化、造船業と連携した機関室・船橋等のシステム・インテグレーション、システム保守等を推進することにより、個々の機器生産システムの改善では限界のある造船関連産業全体の大幅な競争力の向上が必要と考えられる。

第三は、船社ニーズの変化、安全・環境問題に対する社会的要請、新たな需要の創出等に対応するため、ネットワークによる研究組織のダイナミックな連携を可能にする研究開発基盤の強化である。市場の成熟化が予測される現在、既存市場への過度な依存から脱却し、蓄積された技術を活用できる新たな市場開拓が重要になる。そのためには、例えば、船社との連携を深め、ニーズを先読みしたライフサイクル・サポート事業や浮体等による社会資本整備市場を創出することが重要になる。また、従来から進められている共同研究開発を一歩進め、知識の共有、分散された研究資源を統合するバーチャル・ラボなどを検討する必要がある。

 

 

 

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