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6.4 造船・舶用工業の高度情報化グランドデザイン

 

(1) 造船・舶用工業に関する現状認識

我が国造船・舶用工業が、将来の需要の頭打ちや労働力の高齢化等中長期的に厳しい事業環境の下、今後とも魅力ある産業として存続・発展していくためには、業務全般の効率化や生産体制の改善、業容の拡大等による経営基盤の強化を進めると共に、研究開発基盤の強化を図る等の課題を克服していく必要がある。

これらの課題の解決に当たっては、これまで行われてきた生産性向上努力の延長のみでは不十分であり、造船・舶用工業における業務の進め方/業態の変革による産業全体の底上げをベースとする高度な企業間競争の実現(高度な競争環境の実現)が不可欠であると考えられる。現在急速に進歩している高度情報化技術は、このような観点からの事業変革にとって極めて有効なツールの一つであり、造船・舶用工業とも各企業による自助努力を中心としつつ、業界全体として所要の取り組みを進めていく必要がある。

 

(2) 我が国造船・舶用工業が目指すべき方向

我が国造船・舶用工業を構成する各社は、経営基盤という観点から見た場合、韓国主要造船事業者、欧州舶用機器事業者等世界市場で競合するコンペティターと比べて事業規模が比較的小さく、これが設計・生産業務、研究開発業務等の効率向上に際して将来的にハンディキャップとなることが懸念される。

また、造船・舶用工業は、(シリーズ船はあるにせよ)基本的に1船毎に仕様を決定するというその製品の性格上、日々の業務において、仕様・設計の調整、資機材の調達等極めて多様な社内業務、企業間・業界間業務を行っており、労働力の高齢化への対応を含めてこれらの業務の改善が産業の効率向上の重要な鍵となる。

従って、我が国造船・舶用工業に於いて上記する高度な競争環境を中長期的に実現するためには、限られた経営資源を戦略的分野に有効に活用し、併せて企業間・業界間業務等を効率的に実施し得る業態の実現が重要である。造船・舶用工業事業者が中長期的にどのような業態を目指すかは、各社の経営判断等により決定されるべき事項であるが、現時点で有効と考えられるあり得べき姿は以下のとおりである。

1) 造船・舶用工業事業者が、(個別企業の枠に関係なく)特定の建造需要等に関して最適な受注・生産を可能とするためあらゆる業務について有機的に連携することを可能とするバーチャル・エンタープライズ(VE)

2) 造船事業者に於いてコアの業務である設計・建造業務の効率化を目的に、各社単位では限られた経営資源を用いて効率的な設計・建造連携を実現する。

 

 

 

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