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また、2000年以降の限られたパイを巡り、競争が激化する可能性が高い。韓国、中国などの中進国の生産能力の拡大が予想され、さらに欧州、米国の助成制度の継続により世界的な供給能力過剰の懸念がある。特に最近の韓国は、経済混乱の中にあるが、その後の経済構造改革の急速な進展およびウォン為替如何によっては、我が国造船・舶用工業へ及ぼす影響について注視する必要がある。

一方、産業内部の要因としては、労働力の高齢化と減少の懸念がある。造船・舶用工業は、構造不況時期などの歴史的経緯もあり全産業を上回る高齢化と若年労働力の確保が問題となっている。2010年時点までは、特に45〜50歳の団塊世代が退職する時期であり、絶対的な労働力不足と技能・技術の伝承がスムーズにいかない危惧がある。

我が国造船業は、74年をピークに従業員数が減少傾向にある。これは、73年のオイルショックなどによる極端な需要低迷からの構造不況による人材流動化が最大の原因であるが、88年頃からの復興期においても職員本工数は減少傾向をたどった。これには、若年層の造船離れによる本工や社外工の減少、本工に依存せず社外工を拡大する労働力政策などが要因として挙げられる。今後は、いかにして必要な労働力を確保するかが課題であり、かつ工員個々の熟練度を増し、併せて生産性を向上することがより重要になってくる。

顧客や社会環境などの経営外部要因も大きな変化の時期にある。第一は、顧客である船社ニーズの変化が挙げられる。外航海運においては、主要航路で船社間の戦略提携が進むなど、生き残りをかけた競争が激化している。このため、海務・工務人件費の低減、補修パーツ供給の迅速化、人材育成・習熟の短期化、トータルな船舶関連経費の削減ニーズ、経済船型・経済的ライフサイクルの実現・信頼性向上等がより顕著になっている。

一方、ISMコードの発効などを背景に、安全性の向上と運航コストの低減を両立させることを目的に、船舶の陸上支援や主機などのオンラインモニタリング等のニーズが顕在化してきている。トータルなコスト低減と、安全・環境問題への対応という海運業界のニーズの高まりに対応することが重要になる。

これらのニーズの多様化は、先述したノルウェー海運事業者の「Information Technology in Ship Operation Programme」事例に見られるように、有力船主がさらなる船の高度化や情報化を指向する契機となる。例えば、舶用工業などとの連携を前提に、

・最適メンテナンスとスペア部品の補充システム

・船内情報ネットワークによる船内監視、状態診断システム

・操船能力の評価、改善システム

・天候に応じた航路設定の支援システム

・船内文書の電子化、OAシステム

・コンピューターによる船員訓練システム

・船陸情報連携を前提とした操船状態監視、評価システム

 

 

 

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