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第三は、上述した情報基盤を積極的に活用し「業界自体の柔軟性を高めることでVE(Virtual Enterprise)などの形態を目指す」検討が行われている。VEとは、複数の企業がコストとスキルを共有して、急速に変化するビジネスチャンスや大型商談などのプロジェクトに共同であたる柔軟な仮想組織である。例えば、先述した米国産業分野の取り組みであるNIIIPなどがVEを目指した取り組みを実施している。

 

NIIIPでは、アメリカ産業界の種々の分散コンピューティング環境を統合し、参加する企業全体があたかも一つの企業体であるかのようなシステムをゴールに設定している。これらの取り組みは、現状の技術水準でも多くの困難があると考えられるが、将来的には産業構造自体の変革、すなわち多様化するニーズや需要の変動などに柔軟に対応する業界構造を構築することに高度情報化技術は貢献する可能性があることを認識する必要があると思われる。

 

(2) 造船・舶用工業における高度情報化のインパクト

産業の情報化は、これ迄、各企業における個々の業務の効率化から始まり、CIMなど企業内の業務や技術を連鎖するためのツールとして発展してきた。今や業務や技術の連鎖は個別の業界全体に広がりを見せる動きをしている。そして業界全体の技術・知識を共有化し、レベルを高めることで競争力を強化する戦略的な手段となっている。

造船・舶用工業の活性化(競争力強化)においても、このような産業全体の高度情報化をそれらのツールの一つとして積極的に進めることが重要であると考えられる。

造船・舶用工業は、航空機や自動車産業などと同様にアセンブリとパーツ供給の構造を持つが、開発期間が短く、かつ試作が許されないなどの特徴がある。また、歴史的な経緯から経営資源が散逸しており、分散している経営資源の活用が求められる。さらに造船業界は、顧客である船社との関係において、保守業務に関する密接な関係が希薄で顧客のライフサイクル・サポートが十分にできる体制にはなっていない。

これらの造船・舶用工業の業界構造と情報技術の流れを踏まえ、高度情報化が造船・舶用工業に与えるインパクトを図表I.5.1-1にまとめる。

 

 

 

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