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5. 情報化が造船・舶用工業にもたらすインパクト

先述したとおり、情報技術の進展は、従来の企業内情報化をさらに発展させる可能性がある。一方、国内外の各産業においても、産業情報化による事業環境の質的向上を目指した取り組みが見られる。本章では、産業情報化など高度情報化が造船・舶用工業に与える影響(インパクト)と、造船・舶用工業における高度情報化の実現形態(方向性)について検討する。

 

5.1 情報化の動向分析と造船・舶用工業にもたらすインパクト

大容量の情報ネットワークを活用した情報基盤の形成の本格的な流れは、クリントン政権発足直後のNII(National Information Infrastructure)構想として始まった。その後、この構想は世界レベルでのGII(Global Information Infrastructure)構想という概念に広がりを見せている。NIIの基本的な考えは、情報基盤の整備により?顧客との密着による販売・営業の強化、?グローバルな調達や生産などの最適計画化、?意志決定の迅速化、?情報交換による業務全般の効率化が図られ、産業競争力の強化につながるというものである。このために、産業政策として、インフラの整備、情報交換標準づくり、人材育成などの環境条件を整備することの重要性がうたわれている。ここでは、情報技術の発展の方向性を踏まえ、産業情報化に代表される高度情報化の流れと造船・舶用工業との関連について整理する。

 

(1) 情報技術の発展と高度情報化の基本的な方向性

情報技術(Information Technology:IT)の発展はめざましい。コンピューター価格性能比の飛躍的向上、ネットワーク化の進展により、ダウンサイジング(汎用コンピューター中心からサーバ、パソコン中心のコンピューターシステム)やネットワーク・コンピューティング(コンピューターのネットワーク化)という大きな流れが形成された。特に90年代からは、このような情報技術の方向性に基づき、?オープンネットワーク化、?分散コンピューティング、?オブジェクト指向技術などの新しい情報処理の流れが起きている。

オープンネットワーク化は、インターフェースの仕様をオープンにすることや、アプリケーションを連携するサービス機能を持つミドルウエアなどの技術により、従来では難しかった異なるコンピューター間のネットワーク化を促進する。これらの流れを受け、異なるコンピューター機種間にまたがってアプリケーションを処理する分散コンピューティング技術が普及しはじめた。また、大規模化、複雑化する一方のソフトウエアに対して使いやすさ、作りやすさを飛躍的に増大させるオブジェクト指向の考え方やプログラムが効果を発揮し始めている。

 

 

 

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