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このように、米国造船業界は、需要創造(米海軍からの需要)、法規制(ジョーンズ条例)、補助金制度(CDS)などによる連邦政府の保護下にあり、日本、韓国などと比べて競争環境が生じにくい状況となっていた。

一方、米国造船業界の将来市場の見通しは必ずしも明るくない。

まず商用船舶について見ると、今後米国造船業界が受注すると見込まれる国内の海上船舶は年2〜3隻程度と予想されている。一方、国際市場における需要はこの先10年間にかなりの伸びを示すと予測されている。MARAD(MARitime ADministration)の予測によると、1992年から2001年までの10年間の、全世界の商用新造船需要は7,300から9,900隻である。このうち約半分はタンカーである。また、4分の3は後半(1997年〜2001年)に需要が発生すると見込まれている。ほとんどは老朽化船のリプレース需要である。

米海軍の軍用船舶の需要について見ると、連邦政府の国防予算は冷戦後の軍備縮小の流れを受け、1980年代をピークとして削減傾向にある。DoDは1995年から1999年までの5年間に年平均8隻の新造船を発注する計画である。

海外の軍用船舶については、自国の造船業者からの調達がほとんどであり、国際マーケットはほとんど見込めない。

このように、米国造船業界の将来的な市場展望は必ずしも明るくないなかで、唯一市場拡大が見込めるのが、商用船舶の国際市場である。

400フィート以上の建造能力を保有する造船業者は全世界に133以上ある(1993年)。日本と韓国は、世界の商用船舶の半分以上を建造している。米国造船業界は、これまで連邦政府の保護により十分な競争環境が醸成されなかったため、日本、韓国などと比べてコスト面などの国際競争力が低下していた。

このような中で、連邦政府は1993年10月に、米国造船業界における競争力向上を目的とした「National Shipbuilding Initiative」を議会に提出したが、その中でMARITECHを提言した。

 

 

 

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