日本財団 図書館


(2) 米国

米国造船関連業界における代表的な情報化の取り組みは、MARITECHプログラムと呼ばれている。MARITECHは、米国造船業界の競争力向上を目的とし、DARPA(Department of Defense Advanced Research Projects Agency)によって管理され、造船関連業界が主体となって活動するプログラムである。

連邦政府は1993年10月に、米国造船業界の競争力向上を目的とした「National Shipbuilding Initiative」を議会に提出したが、MARITECHはその中の一要素として提言された。MARITECHプログラムは1993年11月10日に「National Defense Authorization条例」によって議会承認を受け、1994〜1998年度までの5カ年のプログラムとして活動を開始した。

 

1) 情報化の背景と動機*5

船舶の建造を行う米国の造船業者は、「メジャー」と「セコンド・ティア(第2階層)」に区分される。この他、建造は行わず、補修を専門に行う業者もある。

メジャーは400フィート以上の大型船を建造する能力を持った業者であり、17業者ある(1993年)。このうち最大手の9社は米海軍の軍用船舶の建造を行っている。メジャーの受注は米海軍を始めとした国内需要に依存している。

セコンド・ティアは約100業者ある(1993年)。セコンド・ティアは主に河川や沿岸、湾内を航行する小型船舶の建造、補修を行う。1920年に連邦政府が制定したジョーンズ条例は、米国の沿岸、河川における船舶の航行を米国籍に制限した。沿岸や河川を航行する小型船舶を市場とするセコンド・ティアは、ジョーンズ条例により政府の保護を受けていると言える。なお、セコンド・ティアの中には、国際市場に打って出て成功している業者もある。

第2次世界大戦後、米国造船業界は、米国籍船の旺盛な建造需要に直面した。米国政府がCDS(Construction Differential Subsidy)という補助金制度を創設したためである。CDSは、建造費の内外価格差を政府が補助するというものであった。1970年代の終わりには、補助金の額は、法的な上限ぎりぎりである建造費の50%まで上昇した。

1981年に、レーガンはCDSを停止した。このため商用船舶需要は建造費の安い国外へと流出し、米国造船業界が1983年から1992年の間に建造した商用の海上船舶はたったの8隻であった。このため、米国造船業界は軍需への依存をさらに高めることとなった。

 

*5 THE WHITE HOUSE, "Strengthening Amirica's Shipyards: A Plan for Compenting in the International Market", President's Plan to the Congress of the United States, Oct. 1,1993を元に作成

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION