日本財団 図書館


2) 海上物流の効率化対応

海運業の情報化を促進するもう一つの要因は、海上物流を含めた全体的な物流効率化要請である。外航海運をめぐる国際競争の激化、内航海運の効率化要請や競争激化を背景に、効率的な運航や荷さばきを確保するための情報化の取り組みが活発化している。

第一は、海上物流関係者による電子データ交換(EDI)の導入である。従来より荷主・海貨業者・船社間では、船積指示書(S/I)、コンテナ貨物受取書(D/R)、船荷証券(B/L)のEDI化は、SCネット、SFネットPOLINET等で実施されてきた。現在は、EDIの国際標準であるUN/EDIFACTに準拠したEDI実証実験を検討中である。

また図表I.3.1-1にあるとおり、港湾管理者や税関当局においてもEDI化による効率化の動きを進めている。

第二は、荷主の物流効率化要請を受けた海運業および荷主主導の取り組みである。船社間EDIでは、船社のコンソーシアムを結成し、運航および貨物情報を共有化している。これらにより各停泊地ごとの荷役業務の効率化が実現されつつある。

また、荷主と船社(オペレータ)が一体となった複数船の一体管理も徐々に事例が増えている。例えば鉄鋼などの大口荷主が、自社用船の複数船舶全体を統合管理し、船舶の動静と予定を管理することで運航の効率化を目指す取り組みが行われている。この場合、船舶に搭載が進んでいる位置計測システム(GPS)と船陸通信ネットワーク、およびコンピューターを結びつけた情報技術が貢献している。

さらに、海運業と荷主、および陸上物流事業者が連携し、最適な運航オペレーションを実施する検討も徐々に進みつつある。今後も、コンピューターと通信を活用した船舶の情報化、およびソフト化がますます進むことが予想される。

 

3) 海運業と造船・舶用工業間の情報化動向

海運業と造船・舶用工業間の業際における情報化は、本格化していない。但し、先述したように船舶CALSプロジェクト(NCALS)により、技術的可能性に関する実証実験が行われており、今後の情報化の促進が期待されている。

船舶CALSで海運業と造船・舶用工業の情報交換実験は、

?船舶設計図書の提出

造船所と船会社の間で、現状紙ベースで行われている設計図書の提出および承認業務の電子化、ネットワーク化

?船舶関連情報の共有化

発生頻度の高い不定型な船会社におけるトラブル情報などの共有化などの検証を検討している。これらが実用化すれば、効率的な事務処理と顧客ニーズに適切かつ迅速に対応できる環境が整備される可能性がある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION