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3. 関連業界、団体における情報化の動向

 

今後の情報化は、造船・舶用各社や業界内の情報化にとどまらず、顧客や関連団体も含めた産業全体に進展させることが重要な方向性になる。本章では、海運、船級協会、海外の海運・造船関連産業における情報化プロジェクトの動向を整理する。

 

3.1 海運業における情報化の動向

 

(1) 海運業(船舶)の情報化の動向

海運業(船舶)の情報化は、?船舶自体の高度化・エレクトロニクス化、?運航の安全の向上、?物流全体の効率化にともなう効率的な運航や荷物管理などを核として進められている。(図表I.3.1-1参照)

1) 船舶の情報化・高度化

船舶の高度化事例としては、シップ・アンド・オーシャン財団が平成4年から2ヵ年計画で実施した「内航船の近代化に関する研究」における近代化船がある。近代化船は、船の省人化と安全性の向上の両立を求めることを目的として、情報技術やセンサー技術を駆使して高度な船内設備を搭載するとともに、衛星通信などを利用して陸上のオペレータとの連携を実現した。

近代化船は、船舶の情報化と船陸の情報連携を実現している取り組みとして注目されている。すでに一部の船主は近代化船を導入し運航を開始しているが、本格的な普及は今後の課題である。

また、ISMコード(船舶の安全運航および汚染防止のための国際管理コード)が94年IMO(International Maritime Organization)のSOLAS締約国会議において採択されたことを契機に、さらなる安全性の向上が追求されている。ISMコードは、直接船の情報化に関わることではない。ただし、コードの中で船舶と陸上オペレータの有機的な連携を求めている。例えば「安全管理システムの中に必要に応じて会社の支援を要請できることを確立する(ISMコード5.2)」、「安全管理システムは、緊急事態に対し、会社の組織がいつでも対応できる手段を持つようにしなければいけない(ISMコード8.3)」、「安全管理システムは、不適合や事故が会社に報告され、その調査および解析される手順を含む(ISMコード9.1)」などの記述がある。

これらの流れを受け止め、積極的に安全管理を充実させるために衛星通信とコンピューターを利用した船陸連携システムを構築し、保守や緊急事態における情報交換体制の整備や、船内文書管理システムを構築する事例が増えつつある。また、電子海図の導入が急速に進む中で、電子海図に合わせた気象情報や事故情報などを提供するサービスなども検討が進んでいる。

船舶の情報化は、省力化・省人化や安全性の向上などを目的として今後とも進むと考えられる。一つの流れは、従来の船舶高度化と同様に、航海計器システム、荷役システム、機関監視システムなど船舶と一体化したエレクトロニクス技術の導入であり、一方は、コンピューターを中心とした船のOA化である。近年、電子メールの普及が著しいが、これを船陸間に活用する事例も出現している。船員の高齢化やコンピューターの扱いになれていないなどの要因があるものの、今後とも情報化は進むものと考えられる。

 

 

 

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