1.3 先端的情報化技術の動向
(1) 分散オブジェクト技術
1)オブジェクト指向/分散オブジェクト
オブジェクト指向とは、一括りの情報に対し、それに対する処理や操作を予め与えるような考え方である。オブジェクトという概念は当初シミュレーションを行うために編み出されたものであり、現実世界の、ある対象における有限かつ抽象的な反映物といえる。オブジェクトは、データ(インスタンス変数)とそれに対する処理(メソッド)を持ち、特定のメッセージに応答する実体である。以下にオブジェクト指向の主な概念を次に挙げる。
?抽象化
表現したい対象を煮詰めていって、自分が必要とする表現に落とし込む。
?カプセル化
オブジェクトは、(誰が)どんな情報や動作が要求できるかというインターフェースが定義されており、その内部構造(実装)は外から見えない。
?インスタンス化
同じ動作をする、複数のオブジェクトを作成するのに、インターフェースと実装(=クラスの宣言)は一回行うだけで良い。
?継承
時計に例えれば、腕時計や目覚まし時計は、共に時刻を変更し表示するという機構を持つ。この機構を基本(基底クラス)にすると、腕時計や目覚まし時計といった異なる種類の時計(派生クラス)オブジェクトを作成する際に、上記の機構を再利用することができる。
従来のソフトウェア開発の手法は「処理」、「データ」、各種の「状態」、あるいは「イベント」のどれかに注目するものが殆どであるが、オブジェクト指向開発を用いると、これら4つの要素をうまく統一的に扱うことができる。また、オブジェクト指向開発では、似て非なるプログラムを効率良く作ることが出来る等、大規模なプログラム開発に適している。
分散オブジェクト技術は、クライアント・サーバー環境において、オブジェクト指向によるアプリケーションを開発するために必要な、オブジェクト連携のための技術である。個々のコンピューターに配置されたオブジェクトがサービスをやり取りすることで、柔軟な分散処理環境が達成できる。