DoDは、この10年間に国防CALSに関して約5,000億円の開発投資を行い、その成果は近年次々と発表されている。CALSの効果は調達・保守運用等の経費節約にあり、政府国防予算を30%削減し、しかも戦力が向上しうる、ということが実証されつつある。
一方、1993年のNII構想を基に米国商務省(DoC)において、民間企業の競争力の強化策としてCALSが推進されるようになった。DoCではそのビジョンをVEの実現による米国産業の競争力向上としている。現在では商用CALSへの転換を強調して"Commerce At Light Speed"とも称されるようになった。
欧州では1996年からNATO(北大西洋条約機構)の防衛CALSが始まっていた他、欧州航空機工業会(AECMA)、欧州共同体CALS推進グループ(EUCIG)などの産業共同プロジェクト、英国その他各国における取り組みがある。
我が国においては、日本電子工業振興協会のCALS研究会及びCALS推進協議会において調査・検討が行われた。それを受けて1995年6月にCALS技術研究組合(Nippon CALS ResearchPartnership:NCALS)が設立され、同組合が通産省の委託を受けて3年間のCALS実証事業を開始した。同事業はコンソーシアムの形で自動車、鉄鋼、船舶等11事業において行われており、1998年3月に終了する。その中間成果は1997年11月のCALS Expo Internationalで発表された。
個々の民間プロジェクトにおいても、ボーイング社、米ヒューズ社等が、CALSの手法・ツールを用いた情報化に取り組み、生産性を上げている。
(2) CALSの効果
CALS構想は生産・調達・運用までの製品情報をネットワークで一元管理することを目的としている。 また、企業間での情報交換を円滑に行うために,業界単位で交換方式や情報表現形式 などの標準化が進められている。CALSにより「データは一度作り、何度も利用する」ことが可能になる。情報の共有と交換、製品ライフサイクルを通してのプロセスの効率化が推進される。CALSの効果は大きく分けて、以下の3点が挙げられる。
1) 情報の再利用
例えば組立手順書や保守マニュアルを作成する場合に、設計に関するデジタルデータの中からカット&ペーストする等、業務間に跨った情報をやりとりする効率が格段に向上することが期待される。
2) コア・コンピタンス(企業間競争の核となる技術力等)の蓄積
デジタル化されたワークフローと製品データ管理を実現することで、最終的な製品の価値に貢献しない活動を軽減させ、企業のコア・コンピタンスとなる得意技術、知的財産を貯えることが可能になる。必要なときに必要な相手にそれを提示することで、受注、企業連携を組むなどコンテンツで製品競争力の差別化を図ることが出来る。
3) 相互運用性とコラボレーション
業務プロセスの改善と共に、リエンジニアリングを通じて情報の共有及び共同作業のための作業環境が整備される。プロセスの効率化により、調達等のコスト削減、プロセスの自動(省力)化、組織間の応答性を高める、等の効果が期待できる。
これらの要素により、企業活動においては、研究開発から運用・廃棄までの製品のライフサイクル業務間の連携、あるいは業際、地域といった組織横断的な連携が良くなり、製品開発の期間短縮や大幅なコストダウンをもたらし得る。