第1部
情報化技術の現状
1. 情報化技術の動向
情報化技術(Information Technology:IT)の発展はめざましい。コンピューター価格性能比の飛躍的向上やネットワーク化の進展により、ダウンサイジング(汎用コンピューター中心からサーバ・パソコン中心のコンピューターシステム)やネットワーク・コンピューティング(コンピューターのネットワーク化)という大きな流れが形成された。
この情報化技術の発展により、個々の企業の情報化とともに企業間や産業全体の情報化の取り組みが活発化している。本章では、米国の産業分野における情報化プロジェクトとして注目されるNIIIP(National Industrial Information Infrastructure Protocols:米国産業情報基盤プロトコル)プロジェクトを紹介し、合わせて先端的な情報技術について整理する。
1.1 NIIIPプロジェクトの動向
(1) 情報化の背景
米国製造業の1980年代における競争力の低下に際し、米国と日本の製造業の比較分析から、米国製造業における階層型マネジメントと大量生産方式の弊害が指摘され、部門間で情報を共有し、より市場対応性に優れた組織体制が必要とされた。このような背景から、21世紀に向けての米国製造業のビジョンとして、全ての企業情報を電子的に統合データベースで一括管理し、「情報の共有」というコンセプトを元に、各企業が情報を中心に集合形成するバーチャル・エンタープライズ(VE)が標榜された。また、NII構想により、米国国防総省を中心としたCALSを民間企業の競争力の強化策として推進する方針が打ち出され、民間主導のCALSビジョンとしてVEの実現が掲げられた。
(2) NIIIPの概要
NIIIP プロジェクトは、バーチャル・エンタープライズ(Virtual Enterprise:以下VE)の実現による米国製造業の競争力強化を目的としたコンソーシアムで、1994年にスタートした。
IBMを中心とし、General Dynamics、ロッキード、フロリダ大学等といった18機関により構成された全米規模の組織で、インターネットを用い、CORBA等のオブジェクト技術やSTEPによる産業情報交換等、VEを可能にするソフトウェア・アーキテクチャの実現を目指している。