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造船・舶用工業における中長期的な課題は、「経営基盤の強化」、「生産基盤の強化」、「研究開発基盤の強化」の3つに集約される。経営基盤の強化においては、市況の変動に対処すべく事業の多角化を進めるとともに、競争の厳しい造船・舶用機器市場に対処すべく個々の経営資源の有効活用を図る企業連携の強化を進める、業務プロセスの標準化を進め企業間業務の効率化を図る、市場の需要喚起と共に造船・海洋技術を活用した新しい市場の創出を図る、といった方策を挙げることが出来る。生産基盤の強化については、情報の共有とスムーズな交換による生産の効率化を図る、個人に過度に依存しないシステム化した生産工程の構築を図る、仕様に関する企業間の調整をスムーズに行うべく標準化や調整作業の効率化を図る等、生産性を向上するとともに、将来の熟練労働者の減少に対処するための方策が挙げられる。また、研究開発基盤の強化については、企業間連携や業務支援ツールの活用による開発業務の効率化、船舶建造・舶用機器技術を応用した機器・サービス構築のための開発環境作り、研究成果など蓄積したノウハウの管理・活用など少ない研究資源を効率的に活用するための方策が挙げられる。

グランドデザインについては、組織間の情報交換を司る電子データ交換、知識共有及び分散協調作業支援環境たるCIM、その他情報化技術を用いた業務のリエンジニアリング、具体的には主要な業務である設計・生産を含めた造船・舶用工業企業各社間の、各社の実状に合わせた連携の強化を中心に、各企業が事業の効率化を図るために、サブ的な業務の一部についてはアウトソーシングして社内資源の有効活用を図る、といった業態への移行としてとりまとめられた。その最終形態としては、各企業の各種業務機能がプロジェクト毎に最適な形で個別に離合集散するといったバーチャル・エンタープライズの形態が想定される。そのより現実的な形としては、造船業においては、大型商談ニーズに応えるため、設計業務のみ協調する形態(EC:Engineering Cooporative)や建造業務のみ協調する形態(PC:Production Cooporative)といった特定の業務における企業間協調の形態が考えられる。一方、舶用工業においては、企業間協調のイメージとして、機器のシステム化に伴う協調設計・生産や部品の共同調達、OEMや生産協調等を活用した得意分野への資源の集中、船舶の陸上支援などのインフラ共同整備等が考えられる。また、舶用機器市場のグローバル性を考慮し、国際化及び国際標準の導入に留意する必要がある。

 

 

 

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