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造船・舶用工業の高度情報化には、企業活動、産業活動全体に関わる経営基盤及び生産基盤強化をサポートする一つの重要なツールとしての役割が求められている。造船設計・建造はもとより、船舶・舶用機器の開発、保守等のライフサイクル全般に渡る幅広い業務について、造船・舶用工業を中心とした造船関連産業にまたがる高度情報ネットワークを形成することによって、例えば、高度情報システムを介した異なる企業間でのコラボレーションを容易にし、新形式船舶や舶用機器の開発、保守管理等のサービスの新基軸を開くことが期待される。

革命的ともいえる情報化技術の発展の中で、現代の競争においては、グローバルな情報ネットワーク形成によって、保守専門会社等のニュー・ビジネス・カマーが出現し、運航会社も含めた造船関連産業の競争の構図が一気に変わる可能性を秘めている。我が国造船・舶用工業の高度情報化は、企業内に閉じた情報化を意味するものではない。個別の意図とポテンシャルをもった組織間の協業があってはじめてシナジー効果を発揮する。得意分野を有する多くの企業が情報ネットワークに参加し、情報交換の密度を高めることで知識の共有を図ったり、知識のスパイラルな向上が促進される。このような造船関連産業全体にまたがる情報基盤を形成していくことこそ、造船・舶用工業の高度情報化の全体的な基本構想が必要とされる所以である。

 

2. 調査目的

平成8年7月及び平成9年12月に取りまとめられた海運造船合理化審議会意見書「今後の造船及び舶用工業のあり方」によれば、国際的に極めて厳しい競争環境の中で、造船・舶用工業が今後とも魅力ある産業として我が国経済社会、地域経済、雇用機会の提供等に貢献していくためには、産業の高度情報化を含めた諸施策の実施により国際競争力を強化していくことが、緊急の課題となっている。

造船・舶用工業間の高度情報化は、船舶の開発、設計、建造、保守等の幅広い業務について効率化・高度化を可能とし、例えば、高度情報システムを介した企業の設計・開発部門同士の連携を容易にし、新形式船舶の開発・保守管理や新たなシステムの構築等を大きく加速することが期待される。

また、関連産業の海運・検査機関・資機材産業・物流産業を初めとした、多数の分野に亘って、高度情報システムを介しての業務提携は新たな業態の展開・高度化等に寄与することが期待される。

本事業では、中期的観点から造船・舶用工業全般の高度情報化に関する基本構想及びその実現へ向けての作業計画等を作成し、造船・舶用工業及びその関連業界全体における高度情報化の方向性を示すことにより、各業界、企業による高度情報化の取り組みを促進し、もって我が国造船・舶用工業の発展に資することを目的とする。

 

 

 

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