8. 実用機の設計およびまとめ
8.1 実用機の検討
今回のプロトタイプ機は、ほぼ実用機に近い形で設計を実施したため、そのまま実用化できるレベルにまで機能が高められている。
とはいうものの、今後に残された課題も多く、実用化に向けた課題を示すことで実用機の検討とする。
(1) 溶接ロボットメカ
現状の汎用型6軸多関節ロボットでは、動作範囲に制約が多く、より狭隘部への溶接トーチのアクセスを考えた場合、
・アーム自体の長さを長くすること、
・関節部分をよりコンパクトな形状にすること、
・上腕にも回転軸を追加するような軸数追加(7軸)
・360°旋回可能なロボット旋回軸
などメカそのものの開発を期待する。
(2) 溶接ロボットアクセス機構
現状の直動系を主体としたアクセス機構にとらわれない、自由な形態(スイングアーム)のアクセス機構がロボット協調軸として実現できれば、アクセス動作自体がシンプルなものになる。
(3) ケーブル類の処理
今回のロボットの動作範囲は大きくとられているため、ワイヤ送給装置をはじめとする付帯ケーブルの処理が実用上の課題となった。明快な解決策がないのが現状である。
(4) ガントリーマニプレータ
溶接ロボットならびに溶接ロボットアクセス機構の重量が重いため、全体的に剛性の高いガントリー構造となっている。
全体的な軽量化が今後の課題である。
(5) 溶接ロボット制御
協調外部軸に対するモーター出力の制限、軸構成の制限など、制限項目が多いことから、自由な溶接ロボット機構の設計ができない現状にある。今後の課題が多い。
(6) 溶接条件適応制御
今回は、外づけの溶接条件適応制御装置を開発したが、溶接ロボット制御装置の内部機能ととして開発されれば、より高度な制御が可能となる。
(7) 溶接装置全体制御
現時点のレベルでは、溶接ロボットは1台1台が個別に利用されることを前提に開発されている。そのため、マルチロボットシステムとして取り扱わなければならない、今回のような溶接システムの場合に、汎用の入出カポートを利用して、ロボット相互、ロボットとガントリー間の情報のやり取りを実施しているため。実現できる機能に限界がある。
今後、マルチロボットコントローラという複数台のロボットを同時に制御できる制御装置の開発を期待する。
(8) CAD/CAMシステム
今回、干渉問題が重要となるため、本格的なロボットシミュレータをべ一スにCAMシステムを開発したが、より複雑な形状に対して効率的なデータ生成を実現させるためには、オペレータの処理部分とコンピュータの処理部分を明確に分類し、オペレータが簡単に判断できる部分はオペレータにまかせるような、あるいは、コンピュータが困ったときに、オペレータが簡単に介入/手助けしてやれるようなソフトシステムの開発が今後の課題となる。