4.6 溶接ロボット姿勢の検討
上記の検討結果より曲外板ブロック升目構造部分にアクセス可能な溶接ロボット機構の基本設計が完了したので、ロボットシミュレータに、ロボットモデルを構築し、トランス傾斜に対するロボット姿勢、傾斜した升目構造部分に対するロボット姿勢の検討を実施した。
(1) トランスの傾斜に対する溶接ロボット姿勢
図4.12は、トランスが水平面に対して10°傾斜している場合(トランス取付角度θB:10°,外板のロンジ方向の傾斜角度、縦傾斜θL:10°)のトランススペース内へのロボットのアプローチとロンジの溶接をシミュレーションした結果である。トランススペース3mの区画において、ロボットとワークとの間に充分なスペースが確保されていることがわかる。
ただし、この図から着目しなければならないことは、ロンジ溶接の両端点のZ方向の高さ変化が大きい場合には、一定のロボットベース高さで干渉のないロボット姿勢をとらせることは困難であり、ロボットベース高さを連続的に移動させる軸が必要となる。
(2) ロンジスペースに対する溶接ロボット姿勢
図4.13は、溶接対象となるロンジを抱え込むようなロボット姿勢(抱え込み姿勢)をとらせた場合の結果であり、船のロール方向の回転角度(外板横傾斜:θT)を変化させている。本抱え込み姿勢では、θTがマイナスになる場合に、ロボットの下腕とロンジとのスペース確保が困難となっている。一方、図4.14のように、ロボットベースが溶接対象となるロンジから離れるようなロボット姿勢(送り出し姿勢)をとらせた場合には、いずれの角度においても問題のないスペースが確保されている。
これらの図から着目しなければならないことは、部材の傾斜角度ならびにロンジの断面方向に応じて、ロボットベース位置を助々に変化させることでワークとの干渉の起こりにくいロボット姿勢をとることができるという点であり、そのためには、ロボットベースを左右(X方向)に連続的に移動させる軸が必要となる。
(3) 溶接ロボット協調外部軸の構成
以上、升目構造内の溶接を想定したロボットシミュレーションを実施した結果、XYZの3方向に協調的に動作可能な外部軸が必要となることが明らかとなった。検討課題は、ガントリー位置決軸(一般的にはXYZの3軸)との冗長性の解消であり、結論的には、Y方向軸は、オーバーハング部分へのアクセスに不可欠な軸であるが、X軸ならびにZ軸に関してはマニプレータ軸がロボットと協調動作できれば、新たな軸を追加する必要はない。