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図2.10にアークセンサ制御による溶接ビード外観の一例を示す。溶接ロボットには溶接線を直線として教示しているが、溶接線全長にわたり均一で安定した溶接ビードが得られている。また、開先幅およびトーチ高さ方向の倣い精度は±0.5?以内であり、追従の応答性も良好なアークセンサ制御結果が得られている。

 

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なお、立向上進溶接においては直線反復ウィービング式のアークセンサを採用している。本システムでは市販の溶接ロボットに標準装備されている機能をそのまま使用しており、実用的に十分な追従性能を確認している。

 

3. 溶接部ギャップ変化対応方法の選択と設計

 

3次元曲がり部大組立工程の対象部材は、大型かつ複雑狭隘部を有するものであり、個々の部材は複数の工程(加工、切断、小組立、曲げなど)を経てから本工程に搬入されるものである。このため、大型かつ複雑であるための加工精度や取付精度の不良及び、小組立工程での変形などにより、搬入された部材の溶接継手部には誤差の集積として、開先ギャップに変動が存在することとなる。

この開先ギャップの変動が溶接品質を維持するのを困難にしている。当然、開先ギャップが変動しているのに一定の溶接条件で溶接施工を行うと溶接品質の低下を招く原因となる。さらに、開先ギャップは溶接中の熱変形による動的な変動も存在すると考えられている。このため、開先ギャップ変動は溶接品質の低下における主要因と考えられている。

概して、開先ギャップ変動の要因は、静的な精度不良と動的な熱変形によってもたらされることとなる。

また、自動化システムとして開発を行う上で問題となるのは、高度に発展してきているCAD/CAMシステムを利用しても予めプログラムに記述できない、実部材に存在する様々な誤差がある。特に、溶接ロボットシステムで使用されているオフラインプログラミングシステムでは、CADデータを基準にして様々なCAMデータを生成するため、開先ギャップ変動のような外乱が存在してもCAMデータで設定された溶接条件のまま溶接施工されることになり、溶接品質の低下を招き実用化を阻む大きな課題となっている。これは、開先ギャップにおけるセンシング技術の確立がなされていないことに起因するものである。

ここでは、3次元曲がり部大組立に適した開先ギャップ変動の検出方法、検出した信号をフィードバックして溶接品質に影響のない溶接条件に変更させるための制御方法および実用条件の設計について述べることとする。

 

 

 

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