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研究開発の概要

 

本研究開発は船体曲がり部ブロックの大組立溶接を現状の手溶接に代わって溶接の知能制御(適応制御)を搭載した「3次元曲がりブロック傾斜シーム片面溶接ロボット」、「3次元曲がりブロック傾斜隅肉溶接ロボット」、「自動溶接全体制御システム」を開発した。

開発にあたり前段階であるアンケート調査と製造現場に於ける曲がりブロックの実態調査を行った結果、自動化が進んでいる平行部ブロックに比べて曲がり部ブロックの能率は約1/2程度であると共に自動化への要求を確認した結果、本研究開発の方向性に誤りが無いことを検証出来た。

以上の調査結果より各装置の開発仕様作成と基本設計を行い、まず第一段階として平成8年度に「3次元曲がりブロック傾斜 シーム片面溶接ロボット」について現状の?治具仮付け、?技量を要する手溶接で長時間溶接を?開先内仮付け(面内仮付け)で?技量を要しない短時間自動溶接出来る溶接条件適応制御による溶接装置を開発し、25度傾斜に対応可能なプロトタイプ機を完成させた。

第二段階では平成9年度に上記プロトタイプ機を組立現場に改造移設して実船曲がりブロックに適用実験を行った結果、良好な溶接結果が得られたと共に溶接段取り時間を含めた現場一連作業で約4倍の能率が得られた。

一方、「3次元曲がりブロック傾斜隅肉溶接ロボット」、「自動溶接全体制御システム」についても?狭隘部、?変化する溶接部のギャップと姿勢(傾斜)に対する最適溶接方法、溶接線・溶接条件追従方法、溶接トーチのアプローチ方法、ロボット、吊り下げ装置、ロボット運転プログラム生成等について選択・実験・設計を行い実用機にほぼ近い装置を製作した。中でも溶接線・溶接条件追従方法については高速回転アークセンサによる高精度の状況検出が開発の中枢部である溶接条件適応制御に効果を得た。又、実験結果より立向溶接についてはギャップ・溶接線の「ズレ」に対する溶接条件適応制御の必要が無く、汎用アークセンサで十分対応出来ることが判った。溶接部の傾斜については「自動溶接全体制御システム」のCAMシステムでロボット運転プログラムとして生成し、?左右の「ズレ」は溶接時にアークセンサで追従、?左右傾斜と部材傾斜は部材取付け角の1/2に溶接トーチがある位置でプログラムする事で、傾斜角度±20度(立向は30度)、ギャップ4mmに於いても良好な溶接結果が得られた。

完成した溶接ロボットシステムを実船の一部であるモックアップブロックに適用実験した結果、各動作、溶接結果共満足出来る結果を得た。推測ではあるが、溶接能率も現状の2倍以上は得られると確信出来た。

本研究開発で完成した各溶接ロボットは生まれて間もないため開発仕様に対する最低限の性能確認しかされていない状態である。装置自身が持つ現状以上の能力については今後、実船ブロックの適用で経験を積んで明確になって行くと考え、今後の課題とする。以下に本研究開発で得た開発項目別の結果をまとめる。

 

 

 

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