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あらかじめお断りしておく。なお、3.6.4項及び3.6.5項の10トン生産の実験例も参照願いたい。

建物 10トン生産の例の約7倍として 16,800〜25,200万円

(機器類大型化するが数は増えない、水槽の数は増加)

水槽 10トン生産の例の約7倍として 3,500〜5,300万円

(種苗通年入手可能を前提にすると、生産回転良化。一部簡易水槽も併用)

水浄化・殺菌装置 10tの例(5,000万円)の約4倍として 20,000万円

(装置は大型化するが、一部換水の簡易方式も採用し費用を削減)

酸素供給装置 10tの例(300万円)の約7倍として 2,100万円

自動給仕装置 10tの例(200万円)の約7倍として 1,400万円

各種センサー及び集中制御装置 2,000万円

発電機及びポンプ 10tの例(300万円)の約7倍として 2,100万円

その他 1,000万円

合計 48,900〜59,100万円

(ハマチで48,900万円、マダイで59,100万円)

以上のように現在の技術水準では、土地・建物を除いても3億円強の投資が必要となりそうである。これを単純に建物を30年間で、設備・機器類を7年間で均等償却するとした場合の減価償却費はハマチで年5,150万円(生産量当り約515円/kg)、マダイで年5,680万円(生産量当り約568円/kg)となり、前述したアトランティックサーモンの例や現状の海面養殖の例と比較するとどうしても負担が大きい。水槽も含めた各種装置のコスト削減を図ると同時に、システムそのものの機能増強及び養殖密度のアップ等ハードとソフト両面での改善・進歩が必須のようである。ただ、減価償却費も含めた養成コストが海面養殖のコストと比較して大差がなければ、当然本方式の意義があるわけで、そのあたりの原価計算を次に検討する。

ロ)ランニングコスト概算

海面養殖と循環式陸上養殖それぞれについて、100トン生産規模でハマチとマダイのランニングコストを試算し、3-6-4表及び3-6-5表に対比表を示す。色々なファクターがあり、算出根拠も推定値、期待値を使用しているので、あくまでも参考として見ていただきたい。原材料と人件費の合計、すなわち直接原価の段階ではハマチの場合で807円/?と約250円/kg、マダイの場合では844円/kgと約200円/kgほど循環式陸上養殖が安くなっているが、建物・設備投資等の償却を勘案すると、ハマチで約180円/?、マダイで約290円/kgほど逆に循環式の方がコスト高になってしまう。土地・建物を所有しない企業家にとってはさらに初期投資額が膨らむわけで、これでは産業化は難しいと言わざるを得ない。計算基礎となるデータ不足は否めないが、現段階で循環式陸上養殖を採算ラインに乗せるためには、設備・機器類のコスト削減がまづ必要であろうし、同時に、国内においても実証実験を繰り返しながら各種情報を積み重ね、飼育方法の改善等を進める必要がある。

ハ)今後の課題

これまで海外の例や国内の海面養殖の例を調査し、その対比の中から循環式陸上養殖の将来を展望すべく色々な試みを行ってきた。日本の海洋環境を守り、なおかつ重要なタンパク質供給源として我が国への循環式陸上養殖法の導入は大きな意義を持つものであるが、同時に、まだまだ多くの

 

 

 

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