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万円、計96,200万円。

7年償却とした場合の減価償却費13,740万円/年(生産量当り275円/kg)。

海外の循環式養殖システムも対象とする魚や養殖規模によって様々に異なった形態をとっている。特にウナギは水の汚濁負荷に対する抵抗力が強い魚種であるので、水槽の残餌回収装置は比較的簡易な設計となっている。ハマチやマダイ等の完全循環養殖は海外でもまだ実施されていない。また、ウナギ、アトランティックサーモン、ヒラメが循環式養殖の代表的な魚であるが、投資効率の面から生産規模が大型化の傾向になっているようである。

(3)日本での循環式陸上養殖の設備投資例

イ)簡易型循環式養殖システムによるヒラメ生産の例

(株)海洋牧場総合研究所は、初期投資に要する費用を最小化する事を目的に簡易型のヒラメ養殖システムを開発し、販売を開始している。バイオ利用によるアンモニア態窒素の処理は行うが、脱窒装置や殺菌装置は極力削除してコンパクトなユニットにしたもので、1ユニットでヒラメを年960kg生産できる。初期投資額は1ユニット当り約930万円と言う事で、個人企業でも手軽にスタートできると言う魅力があるが、7年償却とした場合の減価償却費は年間133万円となり、やや投資効率が低いようである。1ユニット当りの生産力はもっと高められるとの話であるので、今後の推移に期待したい。

ロ)完全循環式養殖システムによる高級魚生産の例

某大手の機器メーカーは、ヒラメやアワビ等の高級魚介類を、完全な排水処理をしながら養殖する事を目的に完全循環式養殖システムを開発中である。現在は飼育実験の段階であるが、これまでのヒラメ飼育の経験から、ハマチまたはマダイを100トン生産するための初期投資額を、次の様に予想している(マダイの場合の方が高くなる)。

建物(土地を除く) 25,000万円〜30,000万円

水槽 8,500万円〜16,000万円

水浄化・殺菌装置 37,000万円

空調・電気工事費 6,000万円

その他 3,000万円

合計 79,500万円〜92,000万円

仮に建物を30年間で、設備・機器類を7年間で均等償却すると、減価償却費は年間8,619万円〜9,857万円、生産量当りでは862〜986円/kgとなる。このシステムは水を完全な状態にまで還元する事を念頭に組み立てたものであるが、設備投資額の面から対象魚の範囲は相当限定されること、また、個人や中小企業レベルでの導入は難しい等の問題が残るが、顧客の水浄化の要求度に合わせて機器の能力を調整し、コストを下げる事は可能との話である。

(4)循環式陸上養殖システムの初期投資額とランニングコストの概算

これまでの情報を参考にして、ここではハマチとマダイを年100トン生産するのに必要な初期投資額とランニングコストについて、海面養殖の場合と循環式陸上養殖の場合でそれぞれに試算し比較する。

イ)初期投資額の概算

前提としてある程度の換水も許容すること、必要最小限度の設備に抑えることとする。また、正式な見積もりに基づく試算ではなく、今後国内における陸上養殖を産業化するためには、初期投資額をこの程度まで引き下げなければならないと言う期待値も折り込んだ試算であることを

 

 

 

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