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3.5.2 循環式陸上養殖法のシステムと各種機器

(1)システムの基本理念

スコットランドのドライデン・アクア社のHoward Dryden博士が1997年8月のFFI紙(フイッシュ ファーミング インターナショナル)で語った水質制御システムの基本理念と設計技術について記す。

*用水循環式養殖システムはどんな形式でも、初めに要求される最も重要な機能は、残餌と糞を効果的に除去することである。それらが水に溶けてしまう前に除去できれば、水処理のための後行程の負荷が大幅に軽減されるからである。例えば、アクアオプティマ社の水槽(エコタンク)は水槽内の渦を利用し、それらを水槽の底の中心部に集め、速やかに回収除去することを特徴にしたものである。

*次に小型の固形物(浮遊懸濁物)を除去する濾過機能が必要となる。これは、スクリーンメッシュなどを用いた機械的な濾過法が多く用いられる。それは汚水中に半没した多重の円盤(ディスク)や円筒(ドラム)を回転させ、固形物をメッシュに付着させるタイプとスクリーンコンベヤーで固形物を掬いあげるタイプに大別される。前者のうち欧州で普及しているスウェーデンのハイドロテック・ドラムフィルターはこのタイプのベストセラーと言って良い。

しかし、ドライデン博士は固形物を確実に取り除くにはコンベヤーフィルターの方が優れていると主張する。他のほとんどのフィルターはメッシュに粘着した固形物が細かく砕かれ、油滴や蛋白質が簡単に水に溶解してしまいがちだが、20度程度の傾斜をつけたコンベヤーフィルターなら触れた固形物をほとんど破砕せずに水の外に持ち上げることができるからである。

特に、糞から生じる溶解物質は後行程のバイオフィルターとオゾン処理に大きな負荷を与えるので、糞を細かく砕かないようにするのが何より肝心なこととなる。

*固形物を除去しても処理水には微細な有機物が残る。それを分解するための処理行程はバイオフィルター(生物濾過)のデリケートな作用に託される。有機物が少ないうちは、素性の良い好気性バクテリアが活躍してその有機物を精力的に分解してゆくが、前処理が悪く有機物の濃度が濃くなると、不良の嫌気性バクテリアが跋扈してコロニーを作るようになる。このようなコロニーは好気性バクテリアによって分解し難く、病原体の温床にもなりやすい。魚に有害なアンモニア濃度を低く維持するためにも有機物の集中を避けることが大切である。

生物濾過の技術は水処理産業50年の経験を通じて標準化している。大別すると、点滴タイプと没水タイプに分けられる。どちらもバクテリアが付着しやすいように外形の割に表面積の大きい物質が付着媒体(メディア)として使われる。この生物濾過の工程で多量の酸素が消費されるので、その酸素は液体酸素か酸素発生器を通じて補給される。この工程で炭酸ガスを除去するのも重要なことである。

*生物濾過の延長で、最も細かい5ミクロン程度までの粒子を除去するため、加圧流動床が使われる。メディアとして一般に砂が使われる。砂は汚れると互いにくっついて塊になり、浄化の機能を低下させるので化学物質や気泡等を使って掃除し、常に清潔に保つ必要がある。ドライデンアクア社では砂の代りに溶解したシリカの粒子を用いている。この粒子は表面が滑らかで、簡単な逆洗だけで清掃ができ、付着するバクテリアにも優しい。砂フィルターは圧力容器でもあるので小さい蓋が使われがちだが、メンテナンスを考慮すると蓋は大きいほうが良い。

*流動床でも分解できない超微細な有機物を除去するためにオゾンが使われる。

オゾンの酸化力はバイオフィルターの好気性バクテリアの機能を押し上げ、魚の病原体を含む嫌気性バクテリアの増殖を減らす重要な役割を果たす。

 

 

 

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