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トラフグ Tetraodontidae

puffers nei

 

トラフグはフグ亜目、フグ科、トラフグ属に属し、その仲間にはカラス、シマフグ、ナシフグ、マフグなど現在までに23種が知られている。分布は東シナ海、黄海、朝鮮半島西岸、わが国では室蘭以南の太平洋、北海道以南の日本海、瀬戸内海の各地に広く分布している。

産卵海域も五島列島から九州北岸域や瀬戸内海に至るまで、広い範囲にわたっている。わが国では、4000〜5000年前の縄文時代の貝塚から、たくさん発見されており、フグ食の文化は古い。フグにはテトロドトキシンという猛毒があり、江戸時代には中毒患者が増加したことから、幕府はフグ食禁止例を出し、明治21年頃になってやっと解禁された歴史を持つ。

フグの蓄養は、1933年頃から始められていたが、1962年の人工孵化・飼育の成功を契機として種苗の量産化の研究が開始され、1973年、香川県での人工種苗からの養殖成魚が、初めての養殖製品とみなされている。

 

養殖の現状 飼育管理技術にこれほどの差がでる魚がないと言われるほど、飼育は難しく、技術も確立されていない。それだけに一発屋の業者も出てきているという。まだ天然の親魚から卵を採取し、孵化させている状況なので、安定的に質の良い稚魚は得られていない。また、天然トラフグの生育場である渤海湾で、親に育つ前に中国船に捕獲されることが増えており、天然親魚の代わりに養殖魚から親魚を残す努力も始まってはいる。

九州でのトラフグ養殖の中心は熊本県で、大分、長崎、奄美でも広く飼育されるようになってきている。飼育方法によって育成期間や、魚体重の変化は千差万別であるが、そういうギャンブル性が魅力と、飼育にトライする生産者が絶えない。

 

種苗生産 天然の種苗は生残率が低いため、最近はほとんどが人工種苗に依存している。種苗生産は長崎県が最も多く、ついで、愛媛、熊本、和歌山の順となっている。採卵用の親はこれまでは天然の成熟親魚であったが、数年前から、天然魚および人工種苗から大きくなった未成熟魚を、体重3kg以上に養成し、環境調整やホルモン処理によって成熟促進を図り、受精卵を得る技術が確立されてきた。

 

養成 トラフグは日齢20日頃から共食いが始まるので、全長8〜10cmになったら、歯の切除を行う必要がある。その後必要に応じて2〜3回の切除を行う。養殖適水温度は18〜25℃であり、10℃以下ではほとんど摂餌はみられない。また、25℃以上では生理状態に障害が現れ、28℃以上では斃死魚もみられる。しかし、低塩分海水、低酸素海水中での抵抗力は強く、海水比重8でも特に問題はなく、溶存酸素量が1〜0.1ml/lの環境下でも生存するといわれている。現在の養殖方式は、ほとんどが生簀網方式である。生簀網は、6〜8m四方、深さ4〜10mというのが一般的である。噛み合いを防ぐためには、他の魚よりも収容密度を低くする必要がある。

成長と飼育密度の目安

7月下旬 放養初期 40g/尾、0.4kg/m3

8月下旬 100g/尾、0.9?/m3

 

 

 

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