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4.6 バージョン管理

バージョン管理とは、一般的には製品、文書等の生産や運用過程において、刻々と変化するある対象データの全体あるいは一部の情報を複数保持し管理することである。文書などに比べて船のようなより複雑な製品を対象とする場合は、その設計製造工程で複数の作業者あるいは企業が協同で作業を行う必要があり、そのため製品データの共有化が必要となり、結果として複数の利用者による並行作業時の整合性の維持や製品データへのアクセス管理の機能が必要となる。また、共有される製品データを用い、不確定な情報に基づいて設計作業を前倒しで実施したり、コンピューターの障害などによりデータ破壊が発生した場合に、ある時点のある範囲の製品データを保存、復元するような機能が必要となる。

このように、バージョン管理をコンピューターで支援するためには多くの機能の検討が必要であるが、本開発研究ではバージョン管理の対象を、高度造船CIM用に拡張されたPMを利用した設計作業時の製品データとし、PMの運用イメージをある程度限定して、バージョン管理機能の抽出を行った。

 

4.6.1 バージョン管理へのニーズ

PMを用いることで1隻の船の初期設計から建造までの情報を表現できるようになるが、PMを利用して船の設計を行う場合、どのように運用していくかを考えなければならない。

GPMEが提供する機能は造船業だけを対象としたものではないので、実務でPMを利用して船の設計作業を行うには人為的な手間がかかることが予想される。例えば、作業の完了した船の情報を削除する、あるいは過去の船の情報を引用して別の船の情報を生成する作業を行う場合、システムを熟知した者がデータベースの構成に注意しながら手動(コマンドレベル)で行う必要がある。また同じモデルに対して複数の人間が同時に作業を行う場合は、モデルに不整合が生じないように作業者どうしが連絡をとって作業を進めることが必要になる。

そこで、このような運用をシステム的に支援するバージョン管理機能が不可欠と考える。具体的には次のことができる必要がある。

(1) 情報のバックアップと履歴管理

PMに格納した情報は、ハードディスク破壊などの万一のデータ消失に備えて定期的にバックアップを行わなければならないが、このようなバックアップが簡単な操作で行える機能が必要となる。また、1隻の船について設計から建造に至る作業が完了して不要となった情報を、いつまでも作業用のハードディスクに残しておくことは現実的ではない。そこで、この不要となった情報を簡単に削除するとともに、外部記憶媒体にバックアップを取る操作が簡単にできる必要がある。

 

 

 

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