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3. プロセスモデルの検討

本開発研究は造船業の高度な協業作業をシステム的に支援する仕組みの実現を目指すが、そのためには業務フローについての知識を明確にし、プロセスモデルとして表現するとともに、そのモデル情報を用いたプロセス管理システムの姿を明らかにしていく必要がある。本章では、まず、エンジニアリング支援におけるプロセスモデルの適用に関して、その必要性と課題を一般的な視点から述べ、次に、プロセスモデリング技術と市販ワークフロー管理システム製品に関する調査結果について論じ、最後に造船におけるプロセスモデリングに関する検討結果を述べる。

 

3.1 プロセスモデルの必要性

プロダクトモデル(PM)によって表現される製品に関する知識は、PMに基づいたアプリケーションによる技術者の支援のためと、ネットワーク上で分散して作業している技術者や各種システム間で製品知識を共有するために重要なものである。一方、エンジニアリングに関する知識のもう一つの重要な側面として、エンジニアリングプロセスに関する知識がある。ここで、エンジニアリングとは設計と製造分野を指しており、一般のビジネス分野に対応するものである。エンジニアリング作業はランダムに行われることはなく、実行方針に沿って十分計画され管理される。昨今のビジネスプロセス再構築(Business Process Reengineering:BPR)の必要性に刺激されて、プロセスモデリングに関する研究とプロセス管理に関するアプリケーション開発が産業界の大きな注目を集めている。

エンジニアリングプロセスは、ビジネスあるいはエンジニアリングの目的を実現するための相互に結合された一連の作業(アクティビティ)の集合である。プロセスモデルはワークフローモデル、あるいは単にワークフローと呼ばれることもあるが、ビジネスプロセスあるいはエンジニアリングプロセスを表現するものであり、このモデルを用いて、CADモデルの自動定義や操作、あるいはプロセス管理(ワークフロー管理)システムの実行が支援される。プロセス定義は、作業のネットワークとそれらの関係情報、プロセスの開始と終了に関する条件及び個々の作業に関する情報、例えばその作業への参加者や関係するアプリケーションシステムやデータなどから構成される。

図3.1-1は順序関係を持つ8つのアクティビティから構成される単純なプロセスモデルの例である。一つのアクティビティは、一連のプロセスに含まれる一つの論理上のステップを構成する作業の記述である。アクティビティは、コンピューターで支援されない手作業のものもあれば、コンピューターで自動化されるものもある。

 

 

 

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