2.3.3 エージェント技術
エージェント技術は近年盛んに研究されている新しい情報技術である。エージェントは、ソフトウェアエージェントや知的エージェントとも呼ばれるが、自立的に処理を行うことが大きな特徴であり、システム間の相互運用支援や作業者の知的な支援を行う。本開発研究では知識共有を実現するための重要な要素技術の一つと考えており、ACIMリファレンスアーキテクチャにおいては、ACIM Common Facilitiesに含まれるものである。
(1) エージェント技術の背景
遠隔通信技術や分散システム技術の急速な発達により、電子商取引、分散知的情報サービス、VE(Virtual Enterprise仮想企業)に代表される分散エンジニアリング環境などの応用技術が実現性を帯びてきた。これらの進展により、論理的あるいは地理的に分散した節点どうしを結合、通信させる様々な方法が提供され、広範な種類の通信ネットワークへのアクセスが可能となった。通信速度の向上や、ネットワーク間でのプログラムコードの可搬性向上により、ネットワーク上に分散する節点間での実時間性のある対話的な双方向通信が実現されつつある。
これらの実現に寄与すべく、ソフトウェアエンジニアリング分野では要素技術の研究が行われており、特にエージェント技術は盛んに取り組まれているものの一つである。オブジェクト指向技術及び分散システム、分散人工知能などの分野から発展したエージェント技術は、システム間の相互運用、知的な作業支援、快適な通信機能を提供する新しい情報技術である。エージェントは、ソフトウェアエージェントや知的エージェントとも呼ばれるが、ユーザーに割り振られたタスクを自律的に行う。エージェントは意思決定をするのに十分な知識と自律性を持ち、特定のエージェント通信言語を用いて他のエージェントと対話することができる。
現在、以下に示すような情報産業あるいは製造業における諸要求実現のための方法として、エージェントを適用することが幅広く試みられている。
・技量にたけていないユーザーでもコンピューターアプリケーションを十分使いこなせるように、ユーザーインタフェースに知性を持たせる
・ユーザーの好みや目的と要望を扱うために、アプリケーションやサービスを個別化する
・企業ネットワーク、VAN(Value Added Network)、そして、特にインターネットにおいて、膨大な量の情報の流通を管理する
・設計業務、製造業務を管理する
・様々な形態での電子商取引を支援する
(2) エージェントの性質と要素技術
現在のところ、「エージェントとは何か」について明確に定義されてはいないが、通常は