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これらの要求を汎用性をもって実現するシステム技術として、現在注目されているのが分散オブジェクト技術である。分散オブジェクト技術は、ネットワーク上の資源の共有や計算負荷の分散など、分散コンピューティングの利点を持つと同時に、オブジェクト指向の特徴である拡張性と資源の再利用性を併せ持つものである。

現在、分散オブジェクト技術としてOMG(Object Management Group:約600社が参加している世界最大のソフトウェア業界団体)により策定されているCORBA(Common Object Request Broker:Architecture and Specification)と、Windows環境の分散オブジェクト技術としてマイクロソフト社が独自に開発したDCOM(Distributed Common Object Model)がある。本開発研究で目指す知識共有環境を実現するためには、CORBA、DCOMという分散オブジェクト技術を利用し、ネットワーク上に分散した知識と情報及び各種業務アプリケーションを柔軟に統合できる分散オブジェクト環境の構築が必要である。

 

2.2.2 CORBA/DCOMの概要

高度造船CIMの基盤となる分散オブジェクト環境を実現する技術として、OMGによるCORBAとマイクロソフト社によるDCOMが存在することを述べたが、ここでは、この両者についてその概要を紹介し、本開発研究としてのこれらへの対応について述べる。

(1) CORBAの概要

前述のようにCORBAはOMGにより策定されている分散オブジェクト技術の相互運用のための規約であるが、ここではCORBAを含む分散オブジェクト技術という包括的な観点から、CORBAの概念、CORBAの構成、将来のCORBA及び分散オブジェクト技術の方向性並びにCORBAの長所と短所について述べる。

(a) CORBAの概念

CORBAは、幅広くエンドユーザーの利便性や業界ニーズを取り入れた形の分散オブジェクト技術として制定された。この基本概念は次の3つの語句で表現できる。

・オブジェクト指向モデル

・オープンな分散コンピューティング

・ソフトウェアコンポーネントの集成と再利用

これら基本概念の達成のために、具体的には次の機能群を整備している。

・サービス群への統一的なアクセス法

・リソース名とオブジェクト名の統一的な名称管理

・エラー処理に対する統一的な対処法

・セキュリティに対する統一的な仕組み

 

 

 

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