(5)種々の油種に対応できるように、新しいデータが得られた場合の追加が容易に出来るようにした。
(6)新しく対馬海域の海象・気象データを追加し、実際の経過と比較・検証して、満足出来る結果が得られた。
5.2 今後の研究・開発に対する提言
冬季の日本海を想定した大規模油流出事故の防除体制の強化方針については、既に運輸技術審議会で審議され、平成9年12月には報告が出されており、今後の体制の整備と大型回収船を含む防除機器の開発、整備計画に官民協力して取り組む機運にあるので、ここではその一環として、シップ・アンド・オーシャン財団として実行可能と思われる開発事項の提言を行う。
5.2.1 荒天時の流出油防除のシナリオの予想
冬季の日本海を想定した場合、2.2節、表2-2-1及び表2-2-2で示したような類似した海象条件下で発生したイギリスのSea Empress号、およびナホトカ号の事例でもわかるように、荒天時における機械的な流出油の回収は極めて困難であることが予想される。
従って、荒天時の流出油防除のシナリオ(方針)としては次のように考えるのが妥当であろう。
(1)可能な限り早期に、沖合いで分散処理剤による分散を図る。そのため、地域別に事前協議が出来るようなシステムの確立が望ましい。
(2)波高4m以上の条件下では、現存の回収資機材では回収が極めて困難であり、また非能率的であるので、回収船や回収資機材は荒天中は待機して、比較的静穏(例えば波高2m以下)な海象条件の時だけ使用するのが能率的であると思われる。従って、海象条件が静穏になったら素早く能率的に稼動できるような体制の確立が必要である。なお、冬季(12〜1月)の日本海における有義波高0.75mおよび1.75m(最大波高それぞれ約1.1mおよび2.5m)以下の日数の割合は、それぞれ0.1および0.44程度であり、待避場所から素早く現場に駆けつけて稼動することが要求される。
(3)油流出発生位置および気象・海象によっては、沿岸漂着は避けられない。従って、油の漂流予測を行って対策を講じるとともに、オイルフェンス等により漂流方向の誘導または制御を行い、沿岸漂着を極力避ける。そのためには、大波高に耐えるオイルフェンスの開発とその展張方法(例:斜め展張等)の確立が必要と思われる。
(4)海岸に漂着した油は必然的に高粘度化しているので、高粘度油への対応が必要であるが、高粘度油用の回収装置の配備の充実とともに、ナホトカ号事故の際に役に立ったバキュームカー、ガット船、消防ポンプ、等がより効率的に利用できるような体制を整備することが望ましい。また、Exxon Valdez号の事故の際に見られるように、高温、高圧水による洗浄が見た目にはきれいでも、結果的に生態系の回復を遅らせたと言った報告に鑑み、結果的に生態系あるいは環境に対する被害を少なくするような防除措置を講ずる必要があると思われる。また、微生物による自然浄化の促進について、今後の研究に注目していく必要がある。